064.性ホルモンが支える海馬アセチルコリンのin vivo分泌: 活性化作用と脳の性分化

アセチルコリン(ACh)は、海馬機能の賦活に中心的役割を演じ、探索行動や学習中に分泌量が増大する。性ホルモンの海馬に対する活性化作用も、数十年来示されてきたが、自由行動状態のACh分泌に対する性ホルモンの作用は証明されていない。我々は雌雄両性のラットを用い、様々なホルモン環境における海馬体内ACh分泌動態と自発行動量を24時間にわたって同時解析した。ACh分泌量は、雌性より雄性で高い性差が見られたが、性腺を摘除し、性ホルモンの血中濃度が低いと、雌雄共にACh分泌量が極端に低下し、自発行動との相関や性差が失われた。しかし、雄性ではテストステロンの補充が、雌性ではエストロジェンの補充がACh分泌量を高め、自発行動との相関を維持することが判明した。性ホルモンの作用に性特異性が見られたため、次に、新生仔の雌性ラットにテストステロンまたはエストロジェンを投与したところ、成熟後にACh分泌のテストステロンに対する反応が発現し、ACh分泌動態が雄性化した。以上より、海馬のACh分泌は脳の性分化に影響されることが明らかとなった。 ヒトでは、老化により性ホルモンが低下し、アルツハイマー型認知症のリスクが増大する。ACh分泌系の性分化は、各性に応じた性ホルモン系の治療戦略を示唆する。(Journal of Neuroscience, 29: 3808-3815, 2009) pict20090402170638

図の説明

In vivoの海馬体内アセチルコリン分泌動態には性差があり、雄性と雌性では必要とされるステロイドホルモンが異なる。この性特異的な作用は、新生仔期のエストロジェン受容体を介した脳の性分化に起因する。