日本生理学雑誌 第86号2号

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表紙の説明

〈表紙の図〉
大会名:日本生理学会·第100回記念大会
演題番号:2P-186
演題名:ラットにおける視床下部背内側核の活性化は延髄縫線核を経由して脊髄排便中枢を活性化することで大腸運動を亢進させる
演題名(英語):Activation of the dorsomedial hypothalamus enhances colorectal motility by activating spinal defecation center via the medullary raphe in rats
演者:湯木夏扶1,堀井和広2,澤村友哉2,山口裕嗣3,山中章弘3,椎名貴彦1,2,志水泰武1,2
所属:1.岐阜大学応用生物科学部共同獣医学科獣医生理学研究室,2.岐阜大学共同獣医学研究科獣医生学研究室,3.名古屋大学環境医学研究所神経系分野II
説明(キャプション):
近年のストレス社会において,過敏性腸症候群などのストレス誘発性排便異常が問題となっている.消化管運動は,内在神経系と中枢神経系により制御されているが,過敏性腸症候群では消化管に器質的な異常がみられないことから,中枢神経系の異常が病態の本態であると考えられている.ストレスが中枢性の排便制御機構に与える影響を明らかにすることで,病態解明への寄与が期待される.最近,内側前頭前野から視床下部背内側核(dorsomedial·hypothalamus:DMH)に投射するグルタミン酸作動性神経が,ストレスを受けた時の交感神経反応(心拍,血圧,体温の上昇)を引き起こすことが報告された.本研究では,DMHに着目し,ストレス誘発性排便に関与する神経経路を明らかにすることを目的とした.
A:麻酔下で遠位結腸および肛門にカニューレを挿入・固定し,内腔圧の変化と肛門から送り出される液量を測定した.
B:DMHにAMPA受容体作動薬を投与すると,大腸内腔圧の顕著な変動とそれに伴う送液量の増加が引き起こされた.
C:延髄縫線核および間脳A11領域から脊髄腰仙髄部に投射するモノアミン作動性神経が大腸運動を制御することが明らかとなっている.そこで,DMHから縫線核に投射する神経の活動をDREADDシステムにより抑制したところ,DMH刺激による大腸運動亢進応答は阻害された.DMHからA11領域に投射する神経を抑制した場合も同様の結果が認められた.
D:以上の結果より,DMH-縫線核,DMH-A11領域のルートおよび下行性モノアミン作動性神経がストレス時の排便誘発に関与することが示唆される.

利益相反の有無:なし