056.小脳シナプス可塑性を担うデルタ2型グルタミン酸受容体はイオンチャネルとして働いていない

イオンチャネル型グルタミン酸受容体ファミリーのメンバーであるデルタ2型グルタミン酸受容体(デルタ2受容体)は、シナプス形成・維持およびシナプス可 塑性(LTD)を制御する重要な分子である。しかし、デルタ2受容体を活性化させるリガンドが未同定であることから、デルタ2受容体が本当にイオンチャネ ルとして機能するのかどうかは謎であった。この長年の問題を解決するために、我々は2種類の変異をデルタ2受容体のチャネル部分にそれぞれ加え、ウィルス ベクターおよびトランスジェニックマウスを用いてデルタ2受容体欠損動物に導入することにより、変異デルタ2受容体のチャネル機能の役割について追究する という新しいアプローチを取った。驚くべきことに、Ca2+透過性を失った変異型デルタ2受容体の導入によっても、デルタ2受容体欠損マウスのほとんどす べての異常表現型は回復した。(J. Physiol., 579: 729-735, 2007)。また、チャネルポア部分を閉塞させ、イオン透過性をすべて欠失した変異型デルタ2受容体も、デルタ2受容体欠損マウスにおいて障害されていた LTDを完全に回復させことも分かった(J. Physiol., 584: 89-96, 2007)。これらの所見は、デルタ2受容体はイオンチャネル型グルタミン酸受容体に属するものの、その主要な機能の発現にはイオンチャネルとしての機能 は不要であることを強く示唆する(図参照)。近年、他のイオンチャネル型グルタミン酸受容体においても非イオンチャネルとしての機能を持つことを示唆する 報告が相次いで出ており、デルタ2受容体をモデルとして、グルタミン酸受容体の新しい活性化様式の解明が進むことが期待される。 pict20071204150337