054. TRPA1の活性化による脊髄後角における興奮性シナプス伝達の増強

TRPA1はTRPチャネルファミリーのなかで最も新しいもので、末梢における侵害性冷覚受容だけでなく神経因性疼痛や慢性疼痛などの病態時におけ る難治性疼痛にも関与していることが示唆されている。しかしながら、中枢神経系におけるTRPA1の局在ならびに機能は全く不明であった。本研究では、成 熟ラット脊髄横断スライス標本の膠様質細胞にホールセル・パッチクランプ法を適用し、TRPA1の活性化が脊髄内痛覚情報伝達に及ぼす影響を解析した。 TRPA1は膠様質のシナプス前終末においてTRPV1と共発現しており、その活性化に伴って、電位依存性カルシウムチャネルの開口なしにシナプス前終末 へカルシウムが流入し、グルタミン酸含有シナプス小胞の同期的な放出が誘発された。その結果、シナプス下膜のAMPA受容体のみならず、spill overしたグルタミン酸によってシナプス外のNMDA受容体が活性化され、膠様質細胞における興奮性シナプス伝達は増強した。中枢神経系における TRPA1の内因性リガンドは未だ不明であるが、細胞内で上昇したカルシウムがTRPA1を活性化すると報告されている。これらのことから、脊髄における TRPA1は、生理的な痛みの調節あるいは病態時の難治性疼痛に関与している可能性が示された(Journal of Neuroscience 27: 4443-4451, 2007)。 pict20070919192556