045.電位依存性プロトンチャネル分子の発見

神経細胞や筋肉細胞では細胞内外の間に存在する電位差(膜電位)を情報伝達の信号として用いている。この電気的信号を生み出すのに重要な役割を果た しているのが、電位依存性イオンチャネルと呼ばれる一群のタンパク質である。これまでに、カリウム、ナトリウム、カルシウムといった体にとって重要なイオ ンを通すイオンチャネルがどのようなタンパク質であるかは解明されてきたが、水素イオン(プロトン)を膜電位依存的に通すタンパク質に関しては分かってい なかった。最近我々は、このプロトンを選択的に通す重要なタンパク質を同定することに成功した(このタンパク質はVSOP;Voltage-Sensor Only Proteinと命名。)。このタンパク質は、細胞の内側が通常より正の電位になると水素イオンだけを選択的に通すようになる。また、細胞の中の水素イオ ン濃度が、細胞の外の水素イオン濃度に比べて高くなると、さらに多くの水素イオンを通すようになる(図)。生体にとって、細胞内外のプロトン濃度を至適濃 度に保つことは非常に重要である。今回発見した新しいタンパク質は、脾臓やマクロファージ、骨髄など免疫に関わる組織に豊富に存在しており、このことか ら、免疫機能に関わっている可能性がある。(Science, Vol. 312: pp.589-592. Epub 2006 Mar 2023., 2006)(Science, Perspectiveに紹介記事Science 28 April 2006:
Vol. 312. pp. 534 – 535) pict20060524180434