043.神経回路の興奮性を制御するKCNQチャネルの2つの異なる抑制機構

KCNQチャネルは比較的低い閾値(-60 ~ -40 mV)を持つ膜電位依存性のカリウムチャネルであり、神経細胞の興奮性を抑える役割を果たしています。このKCNQチャネルの遺伝子に異常があると、てん かんを発症することが知られていますが、これは神経回路の興奮性の制御がうまくいかなくなるためだと考えられます。KCNQチャネルはGq結合型受容体の 活性化により抑制されることが知られていますが、その抑制機構には、細胞膜中のホスファチジルイノシトール(4,5)2リン酸(PIP2)の分解によると する説と、プロテインキナーゼC(PKC)によるKCNQチャネルのリン酸化によるとする説が考えられていますが、それぞれがどのようにチャネルを抑制す るかについてはまだ十分理解されていませんでした。今回私たちは、抑制時にKCNQチャネルの性質がどのように変化するのかについて、主にその電位依存性 に注目して解析を行いました。その結果、PIP2の減少は「生きている」KCNQチャネルの数を減らすのに対し、PKCの活性化はチャネルの性質を開きに くいものに変化させていることを見出しました (Nakajo and Kubo, J. Physiol. 569: 59-74, 2005)。KCNQチャネルの抑制は神経回路の興奮性を制御する上で重要な役割を果たしていると考えられますが、その分子機構を理解する手がかりになる と考えています。
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