代謝型グルタミン酸受容体は、記憶・学習などに重要な働きを持つ蛋白質です。代謝型受容体はG蛋白質と共役し、細胞内のセカンドメッセンジャー (Ca2+ やcAMPなど)を介して細胞応答を引き起こします。このようなシグナル伝達では、受容体は一種類のG蛋白質と共役するため、ON-/OFF- スイッチとして働くと考えられていました。ところが、代謝型グルタミン酸受容体は複数のG蛋白質と共役して様々な細胞応答をもたらします。今回、われわれ は、異なる結合部位を持つグルタミン酸とGd3+では、活性化されるシグナル伝達経路に差異が生ずることを見出しました。この結果は、結合する物質の種類 により受容体の活性型構造が異なり、活性化されるシグナル伝達経路も異なることを示唆しています(図)。すなわち、代謝型グルタミン酸受容体が、単なる ON-/OFF-スイッチではなく、刺激の種類によって出力の種類を切り換える、マルチパスレギュレーターとして機能しうるということも示唆しています (Tateyama, M. & Kubo, Y. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、2006、103、 1124-1128)。
最近のトピックス(10件)
- 156.リズムに合わせて運動するための小脳の神経活動を解明
- 155. 温められた心筋は安定性と不安定性を併せ持った収縮リズムを刻む
- 154. 小脳プルキンエ細胞のγ型プロテインキナーゼCは、大容量性カルシウム依存性カリウムチャネルを介して複雑スパイクの波形と協調運動を制御する
- 153. 脳領域横断的な同期活動の変化が記憶を支える
- 152.樹状突起におけるシナプス集積は出力のダイナミックレンジを広げる
- 151. HIVは宿主(ヒト)のRNA修飾を悪用して感染・増殖する
- 150.前頭前野からの2つの独立な神経回路が不適切な行動の抑制を生み出す
- 149. 二つのタンパク質の協力で細胞の大きさを一定に保つメカニズムを解明
- 148. 深海の圧力で筋原線維の構造と機能の変化を解明
- 147. 局所的なミクログリア活性は遠隔性に脳神経回路の改編を制御する