代謝型グルタミン酸受容体は、記憶・学習などに重要な働きを持つ蛋白質です。代謝型受容体はG蛋白質と共役し、細胞内のセカンドメッセンジャー (Ca2+ やcAMPなど)を介して細胞応答を引き起こします。このようなシグナル伝達では、受容体は一種類のG蛋白質と共役するため、ON-/OFF- スイッチとして働くと考えられていました。ところが、代謝型グルタミン酸受容体は複数のG蛋白質と共役して様々な細胞応答をもたらします。今回、われわれ は、異なる結合部位を持つグルタミン酸とGd3+では、活性化されるシグナル伝達経路に差異が生ずることを見出しました。この結果は、結合する物質の種類 により受容体の活性型構造が異なり、活性化されるシグナル伝達経路も異なることを示唆しています(図)。すなわち、代謝型グルタミン酸受容体が、単なる ON-/OFF-スイッチではなく、刺激の種類によって出力の種類を切り換える、マルチパスレギュレーターとして機能しうるということも示唆しています (Tateyama, M. & Kubo, Y. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、2006、103、 1124-1128)。
最近のトピックス(10件)
- 167. 視交叉上核バソプレシン細胞が、他の視交叉上核細胞の概日リズム周期を決定
- 166.暑さと寒さから逃げるための脳の仕組みは異なる
- 165. リズム知覚における小脳と大脳基底核のもつ情報の違い
- 164. Two-pore channelはPIP2依存的なゲーティングに特化したモードを備えている
- 163. 体温調節の司令塔ニューロン
- 162. 甲状腺ホルモンが小脳機能の発達に不可欠であることを発見 ―先天性甲状腺機能低下症による脳発達障害のメカニズムの一端を解明―
- 161. 上皮細胞でのカリウムイオンリサイクルに関わるイオンチャネル複合体が生理条件下で常に開状態になる仕組みを解明
- 160. 赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけを科学する―背中スイッチではなかった―
- 159. オキシトシンが脂肪を燃焼させるための神経路 〜愛は脂肪を燃やす〜
- 158.精子に必須の分子VSPが電気信号を化学信号に変換するメカニズムを解明