013.小脳核におけるグリシン性神経伝達の発見

大脳や小脳の中では百億以上の神経細胞(ニューロン)が結合して回路を作る。各ニューロンは固有の伝達物質を放出して高速の神経活動を伝えるが、相手の活動を高める興奮タイプ(伝達物質はグルタミン酸)と逆に活動を低下させる抑制タイプ(伝達物質はガンマアミノ酪酸GABA)とに2大別される。 この程、小脳の深部にあるニューロン集団(小脳核という)を脳切片にして調べたところ (1) 小脳核のニューロンにはグリシンの受容体が高密度に発現している事、 (2)電気パルスで小脳核ニューロンを刺激すると仲間のニューロンからグリシン性伝達応答が検出されることが判明した。これらの結果はJ Neurophysiology 90: 3490-3500, 2003に掲載されたが、幸いにも同誌の11-12月号表紙に本論文のカラー図版(ラット小脳切片標本をギムザ染色したもの)が採用され「小脳核においてグリシンが伝達物質として働いていること」が広く紹介された。

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図の解説

ラット小脳切片(生後5日:左) とその模式図(右): 小脳皮質は生後3週間は未成熟であり小脳核(左図の左下方)が目立つ。右の模式図で赤は興奮性ニューロン(グルタミン酸を放出)、黒は抑制性ニューロン(GABAを放出)を示す。小脳核にはグリシンを放出するニューロンがある(緑)。