002.虚血性痙攣とKATPチャネル

ATP感受性カリウム(KATP)チャネルは細胞内ATP濃度によって開閉が調節されるチャネルであり、膵臓β細胞においては血糖センサーとしてインスリン分泌に重要な役割を果たす。一方、痙攣発作の制御に重要な黒質網様部には、KATPチャネルが脳のなかで特に多量に発現しているが、その役割については不明であった。

本研究では、KATPチャネル欠損マウスが低酸素条件下で著しく全身痙攣を起こしやすいことを明らかにした。その原因として、正常マウスでは低酸素条件下においては細胞内ATPが枯渇するために、黒質網様部のKATPチャネルが開き、その結果神経細胞の興奮が抑制されるのに対して、欠損マウスではそのような防御機構が働かないためであると考えられた。

今回の研究成果によりKATPチャネルの虚血時における生体防御の役割を初めて解明した。この成果は痙攣発症のメカニズムを解明する上で重要であるだけでなく、脳虚血に伴う脳障害を軽減する治療に道筋をつける可能性がある(Science 292: 1543-1546)。
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