032.カルパインによるカルシニューリンの限定分解と活性化は興奮性神経細胞死の重要な発症機構である

脱リン酸化酵素カルシニューリンとタンパク質分解酵素カルパインはいずれもCa2+依存性に調節され、Ca2+によって伝達され る細胞内バイオシグナルネットワークの開始点に位置している。これらはそれぞれ神経細胞死などで重要な働きをするとされてきたものの、これまでは互いに独 立した系であると考えられてきた。しかし本研究によって、興奮性神経細胞死のような強いCa2+イオン上昇を伴う病理的な状態では、活性化されたカルパイ ンがカルシニューリンの限定分解を引き起こし、その結果カルシニューリンをCa2+非依存性の恒常的活性型に変化させ、その作用を持続させることにより遅 発性の細胞死を引き起こすことが明らかとなった。この研究によって脱リン酸化酵素カルシニューリンとタンパク質分解酵素カルパインの間の新しいクロストー ク機構が示された。また興奮性神経細胞死は虚血性脳疾患(脳梗塞や脳出血など)後に起こる神経細胞死(特に遅発性)の重要なメカニズムである。また、アル ツハイマー病やハンチントン病、神経萎縮生側索硬化症などの神経変性疾患においても重要であると考えられておりこれらの病態生理の新しい側面が示された。 この新しいクロストーク機構が治療戦略のターゲットとなる事も期待される(J. Biol. Chem. 279, 4929-4940, 2004)。
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