008.神経特異性カルシウム結合蛋白NCS-1による神経終末端Ca2+電流の活動依存性調節

哺乳類聴覚系の中継核である台形体内側核の巨大神経終末端でのP/Q型Ca2+電流は頻回刺激によって増強する現象(活動依存的Ca2+電流促通)が認められ、残留Ca2+仮説によるシナプス伝達促通の分子機構の1つである可能性がある。このCa2+電流促通は神経活動により増加した残留Ca2+によって電位依存性Ca2+チャネルの開口が促されることから、高親和性Ca2+結合蛋白が関与すると予想された。Neuronal Calcium Sensor 1(NCS-1)は3個のCa2+と結合する分子量21万のCa2+結合蛋白で、神経細胞に特異的に発現している。精製したNCS-1蛋白を神経終末端に直接注入すると、活動電位によって誘発されるCa2+電流は倍増する。NCS-1によるCa2+電流促通は、Ca2+依存的であること、Ca2+電流の電位依存性活性化過程を促進すること、細胞内のGTP結合タンパク非依存的であることが活動依存的Ca2+電流促通と共通である。さらにNCS-1のC末端ペプチドが活動依存的Ca2+電流促通を抑制することから、NCS-1は活動依存的Ca2+電流促通の重要な因子であるといえる。現在、Ca2+チャンネル・サブユニットとの結合能、Ca2+電流促通に必要なCa2+結合部位を同定する作業を進めている。また、活動依存性Ca2+電流促通がシナプス伝達促通の必要あるいは十分条件であるか検討中である。
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