157. 生きた臓器細胞や生物の構造と「動き」を電子顕微鏡でそのまま観察する技術を開発

濡れた臓器などの液中試料の構造と「動き」をそのまま走査型電子顕微鏡で観察する技術を開発しました。電子顕微鏡は分解能が最大0.5 nm程度と高いため、小さいスケールの観察に適しています。しかし、真空下にて観察を行うため、観察する試料は水分が蒸発しないように固定処理をする必要がありました。そのため、これまでの電子顕微鏡観察では基本的に固定試料の静止像計測しか出来ないという難点がありました。本研究では、生きた細胞の微細構造と動きをそのまま観察できる新しい電子顕微鏡技術を開発しました。真空と大気圧の圧力差にも十分に耐えて破れず、電子線透過性と変形性に優れた薄膜(DET膜:Deformable and Electron Transmissive Film)を作製しました。このDET膜で濡れた臓器などの観察試料を覆い、サンプルホルダとで密閉空間を作ることで、溶液に浸かった観察試料の微細な構造と「動き」の電子顕微鏡観察に成功しました。画像解析を組み合わせることで「動き」の計測も可能になります。

Real-Time Scanning Electron Microscopy of Unfixed Tissue in Solution using a Deformable and Electron-Transmissive Film., Seine A. Shintani, Seiji Yamaguchi, Hiroaki Takadama, Microscopy: dfac030, 2022.

 

 

 

<図の説明>

電子顕微鏡ライブイメージング法(DET膜法)。左上図:DET膜法の観察時サンプルホルダの模式図。右上図:DET膜法で観察したビーズ粒子。左下図:DET膜法の観察を可能とするサンプルホルダにセットしたマウス摘出心臓。下図:DET膜法で観察したマウス摘出心臓の断面像(左)と動きの計測結果(右)。右下図:DET膜法で観察した液中結晶挙動の計測像。