136. 細胞周期の新しい制御機構の解明

細胞は、分裂を繰り返すことによって増殖します。一つの細胞が二つに分裂する過程を細胞周期と呼び、細胞周期は、G1期、S期、G2期、M期の4つの期間に分けられます。G1期からS期へは、サイクリンD1というタンパク質の量で制御されています。G1期の最後にサイクリンD1が増加し、S期に移行します。S期に移行すると直ちに同タンパク質の量が減ることにより、S期→G2期→M期と移行します。従来、サイクリンD1は、S期になると分解が亢進することにより量が減ると考えられていました。しかし、分解のみが進んでも、合成が盛んなままであれば、厳密にサイクリンD1の量を減少させることは困難です。そこで、我々は、サイクリンD1の合成を抑制するメカニズムもあるのではと考えました。今回の研究により、G1期では、サイクリンD1mRNAのメチル化が抑制されることでサイクリンD1の合成が盛んになり、タンパク質量が上昇していることがわかりました。さらに、S期に入ると、サイクリンD1のmRNAが直ちにメチル化されることにより、サイクリンD1の合成が抑制されることを明らかにしました。このように細胞周期は、サイクリンの合成と分解の両面から厳密に制御することにより、コントロールされていることが明らかになりました。

FTO demethylates Cyclin D1mRNA and controls cell-cycle progression. Hirayama, M., Wei, F.-Y., Chujo, T., Oki, S., Yakita, M., Kobayashi, D., Araki, N., Takahashi, N., Yoshida, R., Hideki Nakayama, H., and Tomizawa, K. Cell Reports 31(1), 107464, 2020.

G1期の最後にCyclin D1 mRNAが脱メチル化され、タンパク質の合成が盛んになり、S期に移行。S期になると再び同mRNAがメチル化させ、タンパク質合成が抑制されると共にサイクリンD1タンパク質の分解も盛んになる。