117. ミクログリアにおける電位依存性プロトンチャネルによる新規の活性酸素産生制御機構

電位依存性プロトンチャネル(VSOP/Hv1)は多くの免疫系細胞に発現し、これらの細胞において細胞内のpH環境を維持することで、活性酸素の産生を補助する役割をもつことが知られていました。一方で我々は本研究において、脳の中の免疫細胞であるミクログリアを培養し、ミクログリアにおいて「VSOP/Hv1が活性酸素の産生を抑制している」という、従来想定されてこなかった新たな機構が存在することを初めて見出しました。また、それが生じるメカニズムについても一部解明しました。

加えて過去の研究で、VSOP/Hv1はミクログリアにおいて活性酸素産生を促進することで脳梗塞時の神経損傷を増大させる働きがある、という報告がなされていました。今回我々は、このような脳梗塞時に見られるVSOP/Hv1による現象は、個体の加齢状態に依存していることを初めて報告しました。以上の結果から、VSOP/Hv1が個体レベルでミクログリアの活性酸素産生を調節する際には、拮抗的な制御機構が個体の生理条件に依存して働いている可能性が示唆されました。


河合喬文図
Unconventional role of voltage-gated proton channels (VSOP/Hv1) in regulation of microglial ROS production.
Kawai T, Okochi Y, Ozaki T, Imura Y, Koizumi S, Yamazaki M, Abe M, Sakimura K, Yamashita T, Okamura Y.
Journal of Neurochemistry: 142(5):686-699, 2017.