115. リアノジン受容体の細胞質および小胞体Ca2+に対する感受性機構は 催不整脈性変異により障害される

心筋リアノジン受容体RyR2は、筋収縮に必須なCa2+を小胞体内腔から細胞質へ遊離させるイオンチャネル蛋白質です。この分子は約5000個ものアミノ酸から構成されますが、遺伝子変異によりアミノ酸が1個でも置換されると、Ca2+リーク能が異常に増大し、ヒトでは致死性の不整脈を起こすことが知られています。然しながら、Ca2+リーク能亢進の分子機構はよくわかっていません。今回我々は、心室頻拍患者の点変異体K4750QをIn vitro再構成し、変異体の単一チャネル電流特性とCa2+動態を調べました。面白いことに、細胞質側Ca2+による活性化、細胞質側Ca2+による不活性化、小胞体内腔側Ca2+による活性化の3つから成るRyR2のCa2+感受性機構群は、点変異にも拘らず全てCa2+リーク能を劇的に高める方向に変化していました。このことから、K4750残基は、細胞質ドメインの3つのCa2+リガンド受容部位群からチャネルポアに至るCa2+結合に伴う構造変化情報の共通の通り道になっていると考えられます。初めてのRyR2変異体のチャネル開閉状態モデル化にも成功し、変異体がCa2+駄々漏れ状態になる仕組みを明らかにしました。変異RyR2発現細胞の小胞体内腔Ca2+濃度を直接測定し、Ca2+リーク亢進によるCa2+枯渇も確認しました。本研究は、JGP創刊100周年記念の研究ニュースに選ばれました。

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1.Research article: Uehara A, Murayama T, Yasukochi M, Fill M, Horie M, Okamoto T, Matsuura Y, Uehara K, Fujimoto T, Sakurai T and Kurebayashi N.   2017.   Extensive Ca2+ leak through K4750Q cardiac ryanodine receptors caused by cytosolic and luminal Ca2+ hypersensitivity.    The Journal of General Physiology. 149: 199-218. https://doi.org/10.1085/jgp201611624

2.Research news: Sedwick C.  2017.  A missense mutation makes a mess of Ca2+ sensing.  The Journal of General Physiology. 149 :175


日本生理学雑誌サイエンストピックス上原(1)

①RyR2のポアとその周辺構造のホモロジーモデリング 黄色球:K4750残基 
②細胞質Ca2+濃度の増加に伴うRyR2単一チャネル電流の変化(上段) pCa 5におけるRyR2チャネルの開閉状態モデル 
③RyR2の細胞質側Ca2+濃度vs.開確率曲線 ④RyR2の小胞体内腔側Ca2+濃度 vs.開確率曲線 
図②~④ では、各性質を野性型WT RyR2と変異型MT RyR2間で比較した。