日本生理学会雑誌82巻2号

CONTENTS

表紙の説明

〈表紙の図〉
大会名:The 9th Federation of the Asian and Oceanian Physiological Societies in conjunction with The 96th Annual Meeting of the Physiological Society of Japan
演題番号:2P-044
演題名:あたらしい「超穿孔パッチ法」がとらえた,T管に起因するCa2+誘発性不整脈の発生.
演題名(英語):A novel superforated-patch technique revealed the Ca2+-triggered arrhythmogenesis from the T-tubules
演者:塩谷孝夫
所属:佐賀大学医学部 生体構造機能学講座 器官・細胞生理学分野
説明(キャプション):
心筋の細胞内カルシウム異常は,早期後脱分極や遅延後脱分極などの興奮性異常を誘発して,心室性不整脈をもたらす.このカルシウム誘発性不整脈の発生メカニズムを,パッチクランプで調べるためには,穿孔パッチ法をもちいて,細胞内カルシウム動態を保存する必要がある.ところが,現行の穿孔パッチ法は,実験手技が煩雑なうえに,ギガシールと膜穿孔に長時間を要する難点をともなう.ここに報告する「超穿孔パッチ法」は,即時のギガシール形成のあと,5分で直列抵抗を20MΩ以下に下げられる,新しい記録方法だ.この方法では,ナイスタチンを,アルカリ(KOH)で滴定して水溶性にかえ,さらにPluronic F-127を添加して,水相中に分散させた.この超穿孔パッチ法で,マウス心室筋細胞をホールセルクランプした.細胞に低K+外液を灌流すると,細胞内カルシウム異常によって誘発される,興奮性異常が観察された.この興奮性異常に先だって,細胞には振幅約10mV,周期約1秒の,静止膜電位のゆらぎが発生した.この膜電位ゆらぎは,低K+外液による過分極が生じたあと,約10秒の遅延を伴って発生した.この遅延は,低K+外液が,T管の深部まで拡散する時間を反映すると考えられた.これらの結果は,カルシウム誘発性の異常興奮がT管膜で発生し,それがT管を経由して細胞表面へ伝導することで,細胞膜の膜電位ゆらぎが発生することを示す.心筋細胞のT管膜の膜電位は,細胞表面の細胞膜の膜電位波形とは,大きく異なっているのかもしれない.
出典 J Physiol Sci. 69(Suppl. 1)S198(2019)
A:ナイスタチンの構造式.
B:超穿孔パッチ法に用いた水溶性ストック液.ナイスタチンも(n),アンホテリシンBも(a),30mg/mLの濃度で,容易にアルカリ(KOH)水溶液に溶解した.
C:ナイスタチン超穿孔パッチ法で,マウス心室筋細胞をボルテージクランプして記録した,ホールセル膜電流の記録例.
D:ナイスタチン超穿孔パッチ法を用いた,マウス心室筋細胞からのカレントクランプ記録.低K+外液の灌流は,静止膜電位を(a),過分極させた(b).この過分極に遅延して,静止膜電位のゆらぎが生じ(c),さらに早期後脱分極につづく異常自動能を生じた.下段には,上段の記録を拡大した.
利益相反の有無:なし