日本生理学雑誌 第82巻3号

CONTENTS

表紙の説明

大会名:第96回日本生理学学会大会/9th FAOPS congress
演題番号:2P-047
演題名:ラット肺静脈におけるカテコラミン誘発性不整脈の分子基盤
演題名(英語):Molecular architecture of catecholamine-induced arrhythmogenicity in rat pulmonary vein
演者:岡本洋介1,ナイン イェイ アウン2,永澤悦伸3,高木大地1,尾野恭一1
所属:1秋田大学大学院医学系研究科細胞生理学講座,2山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所,3東邦大学薬学部薬物治療学研究室
説明(キャプション):
肺静脈は心房細動という不整脈の発生源として知られている.実際に,ラットの肺静脈では,ノルエピネフリン(NE)投与で活動電位を伴った異所性興奮が生じる.我々は,ラットを用いて,肺静脈が不整脈を起こす分子メカニズムの解明を試みた.
A:ラット単離肺静脈心筋細胞における,NE 10μM投与で生じるCa2+依存型誘発自動能.パッチクランプ法による活動電位記録とIndo-1を使ったレシオ式細胞内Ca2+測定を同時に行った.J. Mol. Cell. Cardiol.の許可を得て転載.
B:ラット肺静脈心筋細胞における過分極活性型Cl-電流.細胞内Cl-濃度を増加させると電流の振幅が大きくなり,時間動態が早くなった.パルスプロトコルは挿入図の通り.J. Mol. Cell. Cardiol.の許可を得て転載.
C:ラット肺静脈心筋細胞における細胞免疫染色.細胞表面上のNa-Ca交換体(NCX1,緑)が細胞内のIP3受容体(IP3R2,赤)と共局在していることが分かった.NEがIP3R2からのCa2+放出を活性化し,上昇したCa2+がNCX1のフォワードモードを駆動して,脱分極・活動電位が発動していると考えられた.J. Mol. Cell. Cardiol.の許可を得て転載.
D:免疫沈降-質量分析の結果,ラット心臓ではヒートショック蛋白の一つであるHSPA8が,過分極活性型Cl-チャネルであるCLCN2の結合パートナーであると判明している.ラット肺静脈心筋細胞面上で,HSPA8(緑)がNa/K pump(赤)と共局在していた.J. Biol. Chem.の許可を得て転載.
E:CLCN2とHSPA8のドッキングシミュレーション.静電ポテンシャルの高い部分(点線内の濃い青)が両蛋白の結合部位.HSPA8はホモ2量体であるCLCN2の両サブユニットにまたがって結合し,CLCN2の共通ゲートを安定化させていると考えられた.CLCN2-HSPA8チャネル電流が脱分極を促進している可能性が示唆された.J. Biol. Chem.の許可を得て転載.
利益相反の有無:なし