JJP和文要旨 vol 49 no 1

情動と系統発生

  • Emotion and Philogeny
  • M. Cabanac(Dept. Physiol., Fac. of Med., Laval Univ.)

情動性発熱,情動性頻脈という生理現象を指標として哺乳動物(ラット,マウス),爬虫類(イグアナ),両生類(カエル),魚類(フナ)での実験結果の考察 から動物の行動決定さらに,進化の過程においても重要な要因と考えられる情動が系統発生的には両生類と爬虫類の間に発現したと考えられた.[Review pp. 1-10] [English abstract]

短周期明暗サイクルのマスキングおよびパラメトリック効果

  • Masking and Parametric Effects of High-Frequency Light-Dark Cycles
  • ユルゲン・アショフ(マックス・プランク行動生理学研)

短周期明暗サイクルを用いることにより,行動リズムに対する光のマスキング作用を押さえ,光とサーカディアンリズムの解析を可能にした.その結果,光のパラメトリック作用がリズム同調に関与していることが明らかとなった.[Review pp. 11-18] [English abstract]

蛍光濃度消光測定法による pH 依存的なシナプトソーム膜融合

  • H-Dependent Fusion of Synaptosomal Membrane Studied by Fluorescence Quenching Method
  • 熊丸絵美,佐藤雅之,吉田博子,葛西道生,井出 徹1(大阪大院基礎工学研,1科学技術振興事業団一分子過程プロジェクト)

シナプスにおける pH 降下により起こる膜融合について蛍光エネルギー移動を原理とした脂質混合法で調べた.DIDS, SITS, glibenclamide といった Cl チャネル特異的な薬剤の効果からこの膜融合には Cl チャネルが関わっていることが示唆された.[Regular paper pp. 19-25] [English abstract]

ウシ血清アルブミンの溶液とゲル状態における SH 基微環境: ベクトル電子常磁性共鳴法による解析

  • Investigation of Slow Dynamics of the Sulfhydryl in the Solution and Gel States of Bovine Serum Albumin: A Vector Electron Paramagnetic Resonance Study
  • 林 知也,下山雄平1,桑田一夫,惠良聖一(岐阜大医第2生理,1北海道教育大函館校物理)

ベクトル EPR 法を用いて,BSA の溶液とゲル状態での,BSA 分子内のフリーの SH 基の微環境について研究した.ゲル状態において,SH 基に結合したスピンラベルの回転運動はかなり遅くなるが,SH 基を取り囲む分子クレバスの大きさはほとんど変化しないことが明らかになった.[Regular paper pp. 27-33] [English abstract]

牛副腎髄質細胞内に流入した Ca2+ のミトコンドリアへのとりこみと Na+/Ca2+ 交換機構によるミトコンドリアからの Ca2+ 流出

  • Sequestration of Depolarization-Induced Ca2+ Loads by Mitochondria and Ca2+ Efflux via Mitochondrial Na+/Ca2+ Exchanger in Bovine Adrenal Chromaffin Cells
  • 反町 勝,西村茂人,山神和比己(鹿児島大医第一生理)

牛副腎髄質細胞内 Ca2+ 濃度調節におけるミトコンドリアの役割およびミトコンドリアからの Ca2+ 流出機構を fura-2 顕微測光法を用いて検討した.細胞内に流入した Ca2+ はミトコンドリアにいったん取り込まれた後,Na+/Ca2+ 交換輸送系により細胞質に流出されると結論された.[Regular paper pp. 35-46] [English abstract]

運動鍛練ラットの急性温熱負荷に対する体温調節反応

  • Thermoregulatory Responses to Acute Heat Loads in Rats Following Spontaneous Running
  • 杉本直俊,紫藤 治,桜田惣太郎,永坂鉄夫(金沢大医生理学第一)

自発的運動鍛練したラットに体内に植え込んだヒーターまたは気温を上昇させる方法で,体内外から急性温熱負荷を加えたところ,体内からの負荷のみ非蒸散性熱放射反応が亢進し,体温の上昇が抑制される.また,3H-glibenclamide を用いたオートラジオグラフィーから 30k タンパクの膜融合への関与が予想される.[Regular paper pp. 47-53] [English abstract]

ウサギ脳底動脈平滑筋の収縮ならびにカルシウム動態に及ぼす pH の影響

  • Effects of pH on Contraction and Ca2+ Mobilization in Vascular Smooth Muscles of the Rabbit Basilar Artery
  • 青山泰明1,2,植田圭吾1,2,瀬戸川亜希子1,河合康明1(1鳥取大医第二生理・2附属脳幹性疾患研脳神経内科)

摘出ウサギ脳底動脈を用いてセロトニンに対する収縮反応ならびにカルシウム動態に及ぼす pH 変化の影響を検討した.pH の変化は,細胞内カルシウム動態を変化させることにより,発生張力を修飾することが示唆された.[Regular paper pp. 55-62] [English abstract]

自転車競技訓練者と非訓練者における乳酸蓄積閾値と心拍数 175 から決定される運動パラメーターの比較

  • Physiological Parameters Determined at OBLA vs. a Fixed Heart Rate of 175 beats・min−1 in an Incremental Test Performed by Amateur and Professional Cyclists
  • Jose L. Chicharro1,2,Alfredo Carvajal1,Javier Pardo1,Margarita Perez3,Alejandro Lucia3(1Universidad Complutense, Madrid; 2Centro Nacional de Investigacion y Ciencias del Deporte, Consejo Superior de Deportes, Madrid; 3Departamento de Ciencias Morfologicas y Fisiologia, Universidad Europea de Madrid)

運動訓練の効果は,運動時心拍数 175 回/分 (HR175),あるいは血中乳酸蓄積開始閾値 (OBLA, 4 mM) に達する仕事量・酸素摂取量で検討されている.本論文では,HR175 あるいは OBLA と仕事量・酸素摂取量の関係を運動非訓練者とプロ自転車競技者で比較し,訓練によってこの関係が異なることを見出した.[Regular paper pp. 63-69] [English abstract]

ラット膵島のぶどう糖刺激による [Ca2]i 上昇における Na+/Ca2+ exchanger の寄与

  • Contribution of Na+/Ca2+ Exchanger to Glucose-Induced [Ca2+]i Increase in Rat Pancreatic Islets
  • 古橋一隆,葉原芳昭(北大院獣医学比較形態機能生理学)

ラット膵島のぶどう糖による [Ca2+]i 上昇における Na+/Ca2+ exchanger の役割を明らかにするために選択的阻害薬である KB-R7943 を用いた.これによって [Ca2+]i の上昇の二相目が部分的に抑制された.したがって Na+/Ca2+ exchanger を介した Ca2+ 流入がその [Ca2+]i 上昇に部分的に寄与していると考えられる.[Regular paper pp. 71-80] [English abstract]

 

サイクリックAMP依存性タンパク質リン酸化酵素による骨格筋トライアッドからの脱分極誘発性カルシウム放出の制御

  • Regulation of Depolarization-Induced Calcium Release from Skeletal Muscle Triads by Cyclic AMP-Dependent Protein Kinase
  • 伊神 恒,山口直宏,葛西道生(大阪大院基礎工学研究科生物工学分野)

内在性 PKA により骨格筋トライアッドからの脱分極誘発性 Ca2+ 放出は活性化されたが,カフェインによる Ca2+ 放出は活性化されなかった.よって,内在性 PKA でリン酸化される蛋白質は生理的 Ca2+ 動員に寄与する制御因子であると考えられる.[Regular paper pp. 81-87] [English abstract]

麻酔下ネコでの吸入プロスタサイクリン (PGI2) と一酸化窒素 (NO) および両者の併用に対する肺小血管の拡張応答

  • Pulmonary Microvascular Responses to Inhaled Prostacyclin, Nitric Oxide, and Their Combination in Anesthetized Cats
  • 池田宗一郎1,2,白井幹康1,下内章人1,Kyong-Yob Min2,大澤仲昭2,二宮石雄3(1国立循環器病センター研究所心臓生理部・循環動態部,2大阪医大第一内科,3広島国際大保健医療部臨床工学科)

PGI2 エアゾルと NO 吸入は,主に内径100-900 micrometer の肺小動脈を局所性に拡張させた.両者の併用は増強効果を示し,papaverine 静注と同程度の拡張をおこした.また PGI2 による拡張は,L-NAME 前処置の影響を受けなかった事より,この応答には内因性 NO は関与しない事が示唆された.[Regular paper pp. 89-98] [English abstract]

モルモット鼻粘膜イオン輸送の特性及びメサコリンが与える影響

  • Effect of Ion Transport Inhibitors and Methacholine on Short-Circuit Current of Isolated Guinea Pig Nasal Epithelium
  • 鈴木一雅,河原克雅2,寺田修久,野村知弘,今野昭義,福田康一郎1(千葉大学医学部耳鼻咽喉科,1千葉大学医学部第 2 生理,2北里大学医学部生理学)

モルモット鼻粘膜上皮細胞におけるイオン輸送機構とメサコリンによる分泌機序を,Ussing chamber 法を用いて検討した.経上皮粘膜短絡電流は Na+ 吸収と Cl− 分泌によって発生,メサコリンによる短絡電流増加反応は主に Cl− 分泌によると考えられた.[Regular paper pp. 99-106] [English abstract]

細胞の基質分子への接着は加圧により抑制される

  • Cell-Substratum Adhesion Is Suppressed by High Pressure
  • 橋口隆志,山口武夫,寺田成之(福岡大理学部化学)

チャイニーズハムスター細胞の基質分子への接着は加圧 (60−80 MPa) により抑制された.抑制の原因として,加圧によるインテグリンと接着斑形成に関与しているタンパク質との相互作用の異常が示唆された.[Regular paper pp. 107-112] [English abstract]

エンドセリン-1 はプロテインキナーゼ C の活性化を介して低下した赤血球変形能を改善する

  • Endothelin-1 Improves the Impaired Filterability of Red Blood Cells through the Activation of Protein Kinase C
  • 坂下可奈子,大西忠博,石岡憲昭1,上坂伸宏2(NTT 関東逓信病院医科学研,1宇宙開発事業団筑波センター,2日本医大第一生理)

赤血球膜におけるプロテインキナーゼ C の活性増加はメカニカルストレスによって低下した赤血球変形能を改善した.エンドセリン-1 は赤血球膜の PKC 活性を増加させて,低下した赤血球変形能を改善した.[Regular paper pp. 113-120] [English abstract]

ドプラー法とプレチスモグラフィー法による麻酔下ラットの尾血流量の比較

  • Comparison between Tail Skin Blood Flow Measurements by Ultrasonic Doppler Flowmetry and Plethysmography during Heating in Anesthetized Rats
  • 中嶋康文,能勢 博2,鷹股 亮1(京都府立医大麻酔学・1第一生理,2信州大医スポーツ医学)

暑熱環境下の麻酔下ラットの尾血流をドップラー法 (TBFu) とプレチスモグラフィー法 (TBFp, tissue) を同時に使い測定した.TBFp, tissue を絶対値化 (TBFp) するため,ラットの尾を円錐型と仮定して堆積を求めた.そして,TBFp − 0.7 TBFu + 0.1 (r2 − 0.94, p < 0.001) という直線回帰式が得られた.今後の研究にこの式が有用であると考えられる.[Technical note pp. 121-124] [English abstract]