ATP 感受性 K+ チャネル: 構造,機能と病態生理
- ATP-Sensitive Potassium Channels: Structures, Functions, and Pathophysiology
- 稲垣暢也,清野 進*(秋田大医学部生理学第一,*千葉大学院医学研分子機能制御 )
ATP 感受性 K+ チャネル (KATP チャネル) は,細胞内の代謝レベルと細胞膜電位とを共役させる分子である.近年我々は,KATP チャネルが内向き整流性 K+ チャネルのサブファミリー (Kir6.0) と ABC 蛋白であるスルホニル尿素剤受容体 (SUR) の複合体であることを明らかにした.本総説では,KATP チャネルの構造,機能や病態生理について最新の知見を紹介する.[Review pp. 397-412] [English abstract]
軸索内輸送とその情報伝達機構
- Axoplasmic Transport and Its Signal Transduction Mechanism
- 竹中敏文,川上 倫*,堀 英明,橋本容子,比留間弘美*,日下部辰三**(横浜市 大医学部生理・**解剖,*北里大医学部生理)
軸索内輸送が神経伝達物質によってその輸送速度や輸送量等が増減することを見出し,その細胞内情報伝達機構を明らかにした.この現象は反復刺激後増強等のニューロンの活動性に関与し,また,ニューロンの可塑性にも関与していることが分かった.[Review pp. 413-420] [English abstract]
静止時および収縮中の骨格筋細胞内 Ca2+,Mg2+ 濃度
- Cytoplasmic free Concentrations of Ca2+ and Mg2+ in Skeletal Muscle Fibers at Rest and during Contraction小西真人(東京慈恵会医大第二生理)
現在までに骨格筋で蓄積されてきた定量的な情報より,細胞質 Ca2+ 濃度は静止時の 0.05-0.1 μM から活動電位により 10-20 μM にまで変化すると考えられる.細胞質 Mg2+ 濃度は,静止時には約 1 mM であり,収縮中には Ca2+ との結合部位の競合により約 0.2 mM 増加することがモデル計算により示唆された.[Review pp. 421-438] [English abstract]
ヘモグロビンアロステリック物質 RSR-4 がウサギのヘモグロビン酸素親和性,酸素飽和度に及ぼす影響
- Effect of an Allosteric Modifier of Hemoglobin, RSR-4, on Oxygen Affinity and Oxygen Saturation of Hemoglobin in Rabbits
- 内田 耕,Michael P. Reilly*,Donald J. Abraham**,浅倉稔夫***(東邦大第二内科,*デュポン小児病院,**バージニア州立大,***ペンシルバニア大)
ヘモグロビンアロステリック物質 RSR-4 をウサギに投与したところ,経皮的動脈血酸素飽和度 (Tc-SO2) が低下した.動脈血酸素分圧は減少せず,Tc-SO< sub>2 の低下は生体内ヘモグロビン酸素親和性の低下を反映したものと考えら れた.[Regular paper pp. 439-444] [English abstract]
ラット生体位心左心室の収縮期末圧容積関係の非直線性に対するミオシンアイソザイムの影響
- Effects of Myosin Isozyme Shift on Curvilinearity of the Left Ventricular End-Systolic Pressure-Volume Relation of In Situ Rat Hearts
- 李 進雄,大賀好美**,立花英夫,周 偉,伊藤治男**,原田実根*,菅 弘之, 高木 都**(岡山大医学部生理学第二・*第二内科学,**奈良県立医大生理学第二)< p> ラット生体位心左心室の収縮期末圧容積関係曲線に対するミオシンアイソザイムの影響を甲状腺機能低下症ラット (ミオシンアイソザイムは V1 から V3 へシフト) で調べた.その結果,収縮期末圧容積関係曲線の直線性は増したが,むしろ収縮性に依存してその形は変わるという結果が得られた.[Regular paper pp. 445-455] [English abstract]
モルモット下部食道括約筋の抑制性伝達の性質
- Properties of Inhibitory Junctional Transmission in Smooth Muscle of the Guinea Pig Lower Esophageal Sphincter
- 今枝憲郎,城 卓志*,山本喜道,伊藤 誠*,鈴木 光(名古屋市立大第一生理・* 第一内科)
モルモット下部食道括約筋では抑制性接合部電位の発生にアドレナリン作動性神経からの ATP と NANC 神経からの NO が同等に関与していたが,弛緩反応は主に NO が膜電位非依存性に起こしていると考えられた.[Regular paper pp. 457-465][English abstract]
オッポサム近位尿細管細胞に存在する内向き整流性 K+ チャネルの cGMP 依存性蛋白燐酸化による活性化
- Activation of Inwardly Rectifying K+ Channel in OK Proximal Tubule Cells Involves cGMP-Dependent Phosphorylation Process
- 久保川学,中屋重行,吉岡芳親,中村一芳,佐藤文男,森 禎章*,窪田隆裕*(岩 手医大第二生理,*大阪医大第二生理)
A キナーゼにより活性化されるオッポサム近位尿細管細胞の約 90 pS の内向き整流性 K+ チャネルに対する cGMP の影響について解析した.その結果,このチャネルは cGMP 依存性キナーゼによる蛋白燐酸化によっても活性化されることが示された.[Regular paper pp. 467-476][English abstract]
ウシガエル骨格筋の静止時および等尺性収縮時の赤外線サーモグラフィ
- Infrared Thermography of Bullfrog Skeletal Muscle at Rest and during an Isometric Tetanus
- 小林孝和,志茂 誠,杉 晴夫(帝京大医学部生理学)
骨格筋収縮時の熱発生はもっぱら熱電堆によって測定されてきたが,この方法は筋肉と熱電堆の接触による熱の放散があり,また筋肉の温度分布の測定は不可能である.本研究では赤外線サーモグラフィにより非接触でウシガエル骨格筋の静止時および等尺性収縮時の温度分布および温度変化の測定に成功した.[Regular paper pp. 477-482][English abstract]
摘出ラット心臓におけるアセチルコリンの陽性変力作用,陰性変時作用及び冠血管収縮作用:ムスカリン受容体,プロスタグランジン,プロテインキナーゼC,細胞内外のカルシウム及び血管内皮の役割
- Positive Inotropic, Negative Chronotropic, and Coronary Vasoconstrictor Effects of Acetylcholine in Isolated Rat Hearts: Role of Muscarinic Receptors, Prostaglandins, Protein Kinase C, Influx of Extracellular Ca2+, Intracellular Ca2+ Release, and Endothelium
- Sadiye ATES, Ziya KAYGISIZ(Dept. of Physiol., Facul. of Med., Univ. of Osmangazi, Turkey)
アセチルコリンの陽性変力作用,陰性変時作用及び冠血管収縮作用に関わるムスカリン受容体,プロスタグランジン,プロテインキナーゼC,細胞内外のカルシウム及び血管内皮の役割を摘出ラット心臓で検討した興味ある実験結果が纏められている. [Regular paper pp. 483-491][English abstract]
文脈認知時における頭皮上事象関連電位大脳半球間波エネルギー解析
- Hemispheric Laterality in Contextual Recognition
- 下山一郎,伊藤寿彦,柴田忠彦,D. ABLA,中島祥夫(千葉大医学部第一生理)
文脈認知のメカニズムには不明な点が多い.右きき 8 被験者の事象関連電位で音声文脈認知時の左右半球間の優位性を波形エネルギーで解析した.非逸脱文認知では左優位に活発で,逸脱文では左右差は認められなかった.[Regular paper pp. 493-497][English abstract]
トレッドミル上の運動後にみられる一過性立位姿勢変化
- Transient Change in Standing Posture after Linear Treadmill Locomotion
- 羽柴基之(名古屋市立大医学部耳鼻咽喉科)
正常被験者において,トレッドミル上のランニングおよび歩行 (TML) 後に,通常のランニング後にはみられない,自己運動感覚を伴う一過性の前方への直立姿勢変化が観察された.この現象は閉眼の TML の後にはみられず,視覚と体性感覚の間の矛盾がこの現象を引き起こしていることが示唆された.[Regular paper pp. 499-504][English abstract]
寒冷順化および脱順化による,ラットの熱産生に及ぼす適応的変化
- Adaptive changes in the Thermogenesis of Rats by Cold Acclimation and Deacclimation
- 堀 和子,石垣 享*,小山勝弘*,賀屋光晴*,辻田純三*,堀 清記*(兵庫医大生 化学・*生理学第一)
ラットを用いた 10°C での 9 週間の寒冷順化後の,2 週間の 25°C での脱順化において,褐色脂肪組織重量の現象はわずかであったが,寒冷順化により形成された寒冷環境下での熱産生の亢進はほとんど消失した.[Short communication pp. 505-508] [English abstract]