CONTENTS
- INTRODUCTION - 【終身会員のご紹介】 八尾 寛「生理学の魅力とは」、倉橋昌司「生理学,日本生理学会との出会いとその後の歩み」、倉智嘉久「私の生理学研究歴」、 比留間弘美「日本生理学会と私」、 山﨑将生「生理学とともに歩む」、 渋谷まさと「生理学会に育てていただいて」
- SCIENCE TOPICS - 活動電位の速い立ち上がりを可能にする分子機構の手がかりを捉える(角野 歩,炭竈享司,入江克雅)、心筋細胞内サルコメアのカオス的振動はカルシウム変動が引き起こす (新谷正嶺)、母体ストレスが胎児の視床下部ストレス中枢に影響を与えるメカニズムの一端を解明(渡部美穂,新明洋平,福田敦夫)、中年太りのメカニズム(大屋愛実,中村和弘)、未成熟な精子が持つ「電気信号」の重要性を解明(河合喬文)、興奮性シナプスでの効率の高い神経伝達の分子メカニズムを捉える(角野 歩,炭竈享司,Yimeng·Zhao,服部素之,柴田幹大)
- AFTERNOON TEA - 下村拓史「家康と研究と私」、中島和希「リハビリとリンゴとバーグ」、緑川光春「京都のすぐ隣の歴史スポット」
- ABSTRACTS - 第76回日本生理学会中国四国地方会
- ABSTRACTS - 第56回東北生理談話会
- ABSTRACTS (Pt.2) - 第76回日本生理学会中国四国地方会
- ABSTRACTS (Pt.2) - 第56回東北生理談話会
表紙の説明

〈表紙の図〉
大会名:第101回日本生理学会大会
演題番号:2P-109
演題名:スポーツビデオ視聴時の情動変化に対する自律神経反応
演題名(英語):Autonomic·responses·to·emotional·changes·during·sports·video·viewing
演者:和田希来里,米田継武,和氣秀文,山中 航
所属:順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
説明(キャプション):
スポーツや音楽,芸術の鑑賞は,「感動」と呼ばれるような一過性の快感や鳥肌などの自律神経関連応答を引き起こすことがある.本研究において,このような情動変化を惹起するスポーツ映像視聴時に交感神経系が活性化するという仮説の検証を⽬的とした.健康な実験参加者30名(男性15名,女性15名)を対象に,情動変化を惹起するようなスポーツ映像視聴中の自律神経関連応答(血圧,心拍数,皮膚電気コンダクタンス)を記録した.
実験参加者のボタン押しをトリガーとしてそれぞれの自律神経関連応答について加算平均処理を行った.その結果,スポーツ映像視聴時において,感動の主観的報告(ボタン押し)に先立って血圧および心拍数が上昇し,ボタン押し後に皮膚電気抵抗が有意に低下した.
これらの結果は,感動を惹起するようなスポーツビデオ視聴時において,交感神経と副交感神経の二重支配がある心臓や血管と交感神経のみの支配である汗腺という効果器に対して,異なるタイミングで自律神経活動が調節されている可能性が示唆された.また,主観的な感動体験に先立って予測的な情動制御が行われている可能性が示唆された.
A:スポーツ映像が主観的な感動体験を引き起こし,交感神経系を介して情動反応を惹起する,という仮説スキーマ.
B:実験課題.実験参加者はスポーツビデオを見て主観的に「感動した」と感じたときにボタンを押すように教示された(SPO·task).一方で,ボタンを押す動作関連活動を除外するために,SPO·taskと同様の映像を天地・左右反転・逆再生した映像を視聴時に,指示されたタイミングでボタンを押すように要求された(CON·task).SPO·taskとCON·task の順序は実験参加者ごとに擬似ランダムとした.SPO·taskでは,参加者一人当たりの平均ボタン押下回数は40.6回±11.5回であった.
C:実験参加者が「感動」を報告したタイミングのラスター・ヒストグラム(測定ノイズが混入した7名を除いた23名を対象に解析).矢印は特に多くの実験参加者が「感動した」と報告したタイミングであり,「感動シーン(emotional·scene)」と定義した.
D:実験参加者が「感動した」と報告した全試行(左列;all·trials)と感動シーン(右列;emotional·scenes)における平均血圧(MAP),心拍数(Heart·rate),皮膚電気抵抗(GSR)の加算平均(Δベースラインからの変化量)の結果を示した.全試行に比べ,感動シーンにおいて,より反応が強くなっていることが観察された.血圧および心拍数の変化は実験参加者が主観的な感動報告の数秒前から生じており,皮膚電気抵抗は感動報告の後に顕著な反応が見られた.*:p<0.05,**:p<0.01,n.s.:non-significant.
利益相反の有無:なし