21世紀の大学改革諮問 (中嶋祥夫)

千葉大学医学部生理学第一講座  中嶋祥夫

 平成6年から医学部6年一貫教育が始まり、各医学部でカリキュラムの検討がされ、従来からの伝授型ではない様々な新しい教育形態が模索され、それ らの試みは生理学会大会においても教育シンポジウムとして取り上げられ、本誌に寄稿されている。平成9年度に学士入学枠の提言が突如出現し、再びカリキュ ラムの再検討を迫られている大学もあるのではないだろうか。明治、戦後、平成とほぼ50年間隔での第三回目の教育改革とうたわれた大学設置基準の大網化に よって制度の弾力化が計られたが、ハード、ソフトの評価もできないうちに新たなOSが出現し、見直したばかりのハードの変更を迫られていると関する感ずる 次第である。

すでに承知かもしれないが、平成9年10月31日に、文部大臣から大学審議会に「21世紀の大学像と今後の改革方策について」が諮問された。諮問 理由のキーワードに、少子高齢化の拡大、国際化、情報化、科学技術の発展、産業構造の改革、厳しい財政状況、狭い国土、少資源、「不透明な時代とされる 21世紀」が挙げられ、創造性と活力ある国家、国際社会で主要な役割を果たす国家のため、大学の教育研究の質の飛躍的向上が必要であるとしている。諮問検 討事項として

1. 21世紀の大学像では、(1)21世紀の大学像の提示、(2)高等教育(学部レベル)の妥当な規模、(3)大学院の量的な拡充、(4)国立 私立大学の役割分担などが諮問されている。ここでは、高等教育の大衆化と学生の多様化の結果から生じた教育水準の質を問い、国立大学の大学院の量的拡大 (先端科学技術分野、情報関連・国際関連分野、新規産業創出分野の需要に考慮し、2010年に在学者30万人)を図り、学部規模の縮減を考えてほしいとし ている。また大学教育の8割を担い、人文・社会科学分野で大きな役割を果たした私立大学の役割について、国立私立大学の授業料のあり方について検討してほ しいとしている。

2. 大学院制度の改革では、(1)卓越した教育研究拠点としての大学院を整備するための具体的システムの構築、(2)大学院大学や大学院を中心 とした大学の設置促進、(3)高度専門職業人の要請に応じた修業年限の弾力化、(4)社会に開かれた大学院や、国際的に開かれた大学院となるための条件整 備が諮問されている。ここでは、教育の大衆化以前に大学の学部が果たしてきた質の高い教育を大学院が担い、レベルの高い大学院を重点的に整備し、既存の大 学の改組転換や新設による整備の促進策などの検討を依頼している。