内部の理解・時の流れ・外からの見方 (加藤正道)

北海道大学医医学部第二生理 加藤正道

 日本生理学会は大正11年(1922年)7月10~11日東京大学で第1回大会を開いて以来 70年以上の歴史と伝統に輝く学会であり、生体の機能を究明しようと日夜研研鑽努力している同学の人々の集まりである。このような学会に所属していることを会員は皆 誇りに思っていることである。

生理学会は発足当初から長と名のつく役職を設けず、庶務幹事、会計幹事、編集幹 事の三幹事の合議制により学会を運営し、今日までの輝かしい歴史と伝統を作り上げてきた。大会における研究発表も私が入会して(昭和35年)10数年はすべて一般演題 でシンポジウム、特別講演のたぐいはなかった。これは「全会員に等しく発表の機会を与え、特別の扱いをしないという考えにもとづくもの」と恩師の藤森聞一先生から お聞きしていた。

しかし教育委員会が「教育シンポジウム」を別枠扱いで開くようになってからと思 うが、10数年来適切な主題を選んで、特別講演、解説講演、シンポジウムなども開かれるようになってきている。ある主題について現状、論点などを整理し、まとまった 知識を吸収しようとするには好都合になってきた。他の多くの学会でやってきている ことである。

会則(時に応じて手直しは行われてきたが)及びそれに基づく生理学会の執行体制 は変わっていない。もちろん生理学会は「法三章」の精神で運営され極めて適切に、 且つ効率よく運営執行されてきたことは歴代幹事諸先輩の絶大な御努力の賜であり、 感謝と尊敬の念を大にするところである。

生理学会の会員ならばごく普通に受けとめている「当番幹事」を他学会の人々にい ちいち説明しなければならないわずらわしさを経験された会員諸氏も多いと思う。他 学会、他国の生理学会との連絡協議の際に日本生理学会には正式にはpresidentが存在しない、というのもどうかと思う。また評議員の数の多さもこの辺で考え直し、本 来あるべき評議員会のあり方を検討してみては如何であろうか?

会員諸氏がすばらしい学間的業績を挙げておられるのを見るにつけ、また学会にお ける研究発表の扱い方が時の流れとともに変貌をとげてきていることを合わせ、生理 学会の会則とそれにもとづく執行体制が時代にマッチしているのであろうかとの念を 抱いているものである。誤解のないように強調しておきたいことは、生理学会の運営 執行の内容は極めて満足すべきものであり、私が言いたいのは形式・体裁のことだけである。