050.抗ガン剤耐性にイオンチャネルが関与

ガン細胞の抗ガン剤耐性はガン治療において難問中の難問である。プラチナから成るシスプラチンという広く使われている抗ガン剤はDNAと付加体を形 成する ことによってガン細胞にアポトーシス性細胞死を誘導する。しかし、シスプラチンに対し内因性あるいは獲得性耐性を有するガン細胞が何種類も存在している。 今回、獲得性シスプラチン耐性モデルとしてシスプラチン耐性KCP-4細胞株を用いて、その耐性メカニズムを研究した。細胞容積調節に関与している外向整 流性容積感受性(VSOR)クロライドチャネルの活性化がアポトーシス誘導に重要な役割を果たしていることが知られているので、KCP-4細胞において ホールセルパッチクランプ法でVSORクロライドチャネルの活性を調べたところ、このチャネルの機能的発現はほとんど見られなかった。VSORクロライド チャネル活性の欠落がシスプラチン耐性の因子であるものと仮定して、チャネルの活性を回復させることを試みた。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(トリコス タチンA)によって遺伝子転写を促進させるとVSORクロライドチャネル活性の部分的回復が見られ、そしてこの活性回復によってシスプラチン耐性が失われ ることを細胞生存率とカスパーゼ3活性測定で確認した。これらの結果により、VSORクロライドチャネル活性の欠落がKCP-4ガン細胞のシスプラチン耐 性の原因となっていることが明らかとなった(J. Cell. Physiol. 211: 513-521, 2007)。
pict20070502102033