本研究では、著明なチック様運動を表出するマウスモデルを使用して、「大脳基底核-視床髄板内核-島皮質」回路がチックの発現制御に関与することを明らかにしました。チック障害は、突発的かつ反復的に体が動いてしまう「運動チック」や、思わず不適切な言葉を発してしまう「音声チック」を特徴とする疾患です。チックに先行する不快な感覚(前駆衝動)の存在や、強迫性障害、注意欠陥多動性障害などの精神疾患を高率に併存することが知られています。そのため、チック障害は脳の運動領域の異常のみでは病態の説明が難しく、不快な内的感覚の生成や情動などを制御する脳領域の関与が疑われていましたが、詳細な神経メカニズムは明らかではありませんでした。
私たちは、「視床髄板内核」という脳領域が「大脳基底核」の運動領域と、感覚処理や情動に関与する「島皮質」を結び付けていることを明らかにしました。さらにチックモデルマウスで、視床髄板内核-島皮質回路を人工的に抑制することで、チック様運動やチックに関連する異常な神経活動が改善することを示しました。本研究の成果は、チック障害の病態基盤解明に寄与するとともに、将来的には新規治療法の開発にも発展することが期待されます。
H. Kuno, N. Tsuji, K. Kobayashi, T. Takumi, Y. Tachibana. Intralaminar thalamus relays basal ganglia output to the insular cortex to drive tic generation. Cell Reports. 2026 :117272. DOI: 10.1016/j.celrep.2026.117272.

<図の説明>
大脳基底核は「大脳皮質-大脳基底核-視床-大脳皮質」回路を形成し、運動制御、学習、動機付け、認知機能など様々な機能に関与する。大脳基底核はそれぞれの機能に対してある程度独立したループ回路を形成しているが、本研究では機能領域を跨ぐような神経回路を同定した(左図:大脳基底核運動ループ-視床髄板内核-島皮質)。さらに、大脳基底核の線条体にビキュキュリンを局所投与して作製されるチックモデルマウスにおいて、視床髄板内核-島皮質回路を人工的に抑制すると、チック様運動の表出やチックに関連した異常な神経活動が改善することが確認された。
























