133. 海馬CA1シナプスは、文脈学習の直後に多様化して維持される

文脈学習の成立には、海馬CA1ニューロンに対するシナプス入力の多様化が必要ですが、その過程は不明でした。本研究では、特定の場所で危険を回避するInhibitory avoidance (IA) taskを用いて雄ラットに文脈学習をさせ、スライスパッチクランプ法で訓練直後(〜1分)、5、10、20、30、60分時点での興奮性シナプスや抑制性シナプスでの後電流を、各CA1ニューロンで解析しました。結果、GABAA受容体由来の抑制性シナプス入力の多様化は、IA訓練直後の1分以内に起こり、10分をピークに60分以上維持されました。また、GABAA受容体のシナプス集積に必要なβ3 subunit の細胞質内ループ408–409番目のSerineリン酸化は、訓練直後に確認できました。続いて、訓練5分後には、AMPA受容体を介する興奮性シナプス入力も多様化する結果、各CA1ニューロンに対するシナプス入力の多様化が完成しました。一方、プレシナプス側では、訓練直後にbasal dendriteにおけるGABA放出量が一時的に減少し、続いて5分後にはグルタミン酸放出量も増加しました。情報理論に基づくシナプス多様性のエントロピー解析では、訓練5分後に顕著な情報拡大が確認できました。学習依存的なCA1シナプス多様化のTemporal dynamics解明は、記憶障害を伴う様々な認知疾患の障害点抽出にも役立つと考えられます。

Temporal dynamics of learning-promoted synaptic diversity in CA1 pyramidal neurons.
Sakimoto Y, Kida H, Mitsushima D. FASEB Journal 33(12): 14382-14393, 2019.

 

SciTopics2020日

 

<図の説明>

Inhibitory avoidance (IA) taskを用いてラットに文脈学習を行いました。訓練直後(〜1分)にGABAA受容体を介する抑制性ポストシナプス電流がまず先行して強化され、続いて5分後にAMPA受容体を介する興奮性ポストシナプス電流が強化されました。興奮性と抑制性のシナプス入力の強さは細胞毎に異なり、多様化したシナプスはトレーニング後60分以上維持されました。