日本生理学雑誌 第75巻 4号

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表紙の説明

第90回 日本生理学会大会(東京)
演題番号:3PK-204
演題「腸管狭窄線維化の進行における消化管筋線維芽細胞TRPC4,C6 チャネルの役割」
“Intestinal myofibroblast TRPC4, C6 channels confer fibrogenic potential for human stenosis”
演者:倉原(海)琳, 住吉美保, 井上隆司
所属:福岡大学 医学部 生理学

消化管筋線維芽細胞は病変部の創傷治癒に寄与し,この細胞による組織再構築の際に生じる瘢痕や歪みが腸管狭窄へ繋がる.腸管狭窄に対する内科的治療法は未だ見つかっていない.重要な線維化促進因子であるTGF-β1 は狭窄部位で増加がみられ,筋線維芽細胞の分化・遊走・接着・細胞外マトリックスの構築に重要な役割を担う.本研究では様々な物理化学刺激に応答するTRP チャネルをターゲットとして,消化管筋線維芽細胞内のCa2+が炎症・線維化過程で果たす潜在的な役割について検討を行った.

・ A:TGF-β1(5ng/ml,48hr)線維化刺激による筋線維芽細胞株InMyoFib の形態変化.左図は実体顕微鏡観察写真,右図はanti-α-SMA 抗体(緑)及びDAPI(青)による細胞の免疫染色写真.
・ B:TGF-β1(5ng/ml,24hr)刺激によってTRPC4,C6 の発現が上昇するが,TRPC6 の発現をStealth siRNA 前処理で抑制すると,線維化によるα-SMA の発現増加が見られなくなる.左にWB(*:P<0.05 vs NCsi,n=4),右にα-SMA の免疫染色のデータを示す.
・ C:TGF-β1 刺激を24 時間行った細胞において,受容体刺激+機械刺激(CCh: 1μM,TNP: 500μM)によるCa2+ 流入が大きく増大するが,TRPC6 siRNA 前処理によって有意に抑えられた.Ca2+ イメージングのデータを示す.
・ D:本研究全体の内容の概略.消化管線維芽細胞におけるTRPC チャネルの機能解析は腸管炎症・線維化の増悪や治癒の両方向におけるシグナル伝達経路に繋がり,線維化狭窄治療に用いる新しい薬物のスクリーニングのターゲット分子の一つで