日本生理学雑誌 第74巻 5号

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表紙の説明

第89 回 日本生理学会大会(松本)
演題番号: 2PJ-132
演題: 「回し車による病態モデルマウスのうっ血性心不全の検出」
“Detection of Congestive Heart Failure in Disease Model Mice Using a Running Wheel”
演者: 杉原匡美1,2, 小田切史徳1,2, 鈴木 剛1,2, 中里祐二2, 代田浩之2, 櫻井 隆1, 森本幸生3, 呉林なごみ1
所属:1順天堂大・医・薬理学, 2順天堂大・医・循環器内科, 3九州大・医・臨床薬理

拡張型心筋症(DCM)は左心室の拡大及び収縮能低下によって特徴づけられるが,その死因は重症心不全死と心不全症状を伴わない突然死がある.我々はヒトの家族性DCM 変異の一つ(Troponin T の1 アミノ酸欠損:TNNT2ΔK210)に基づいて作製されたモデルマウス〔1〕を用いてDCM の病態と死因の関係を研究している.このモデルマウスは約2ヵ月齢より死亡する個体があるが,その死因が心不全死か突然死かは明確でない.今回,回し車を用いた自発的運動の測定によって非侵襲的に心不全症状を捉えられるかを検討した.2 ヵ月齢のDCM マウスの多くは野生型と同等な運動を示した.3 ヵ月齢では活動性が低下する個体があり,それらは肺重量が増加しうっ血性心不全を起こしていることが判った(B).死亡までの走行活動量の推移から,DCM マウスの死因は重症心不全死と突然死だと考えられた(C).また,活動性が維持されているときにも心室性不整脈が観察されており(D),突然死の原因は致死性不整脈であった可能性が強く示唆された.この方法は非観血的にうっ血性心不全を判別することができ,モデルマウスを用いたDCM の研究に有用だと考えられる.

図の説明 A. 回し車で走るDCM モデルマウス B. 肺重量/体重比(LW/BW,肺うっ血の目安)と1 日あたりの走行距離の関係.走行距離が低下したDCM マウスは全て著明な肺うっ血を示した(LO).一方活動量が高いマウスは肺うっ血を示さなかった(HI).C. 代表的な自発的運動の推移.活動量を保ったまま死亡する個体(HD)と低下してから死亡する個体(LD)がある.D. 十分な自発的運動がみられていたときにテレメトリー心電図で観察された心室性不整脈.
1.Du CK, et al.: Circ Res 101: 185―194, 2007