日本生理学雑誌 第74巻 4号

CONTENTS

表紙の説明

第89 回日本生理学会(松本)
演題番号: 2PJ-013
演題 「新規tRNA 修飾酵素Cdk5rap1 によるミトコンドリア機能制御機構」
“Chemical modification of mitochondrial tRNA by Cdk5rap1 regulates mitochondrial functions through the enhancement of precise protein synthesis”
演者: 周波, 魏范研, 貝塚拓, 富澤一仁
所属: 熊本大学大学院生命科学研究部分子生理学分野

tRNA は最も化学修飾される小分子RNA である.しかし,哺乳細胞においてtRNA 修飾に関わる修飾酵素及びその生理機能がほんとど解明されていない.本研究は,リン酸化酵素Cdk5 の活性制御タンパクとして10 年以上前に同定されたタンパクである,Cylin dependent kinase 5 regulator subunit associated protein 1(Cdk5Rap1)は,実はミトコンドリアtRNA を修飾する酵素であることを発見した.Cdk5Rap1 はtRNA を修飾する酵素に保存されているドメインを有し,tRNA のアンチコドン近傍の37 番目のアデニンをチオメチルする酵素であった.Cdk5Rap1 によるミトコンドリアtRNA のチオメチル化は,ミトコンドリア内のタンパク翻訳の正確性に寄与し,ミトコンドリア機能維持に重要なタンパクであることが分かった.

図の説明:Cdk5rap1 ノックアウトマウスの心筋ミトコンドリアに見られる構造異常.
(A)Cdk5rap1 によるミトコンドリアtRNA(Trp)のチオメチル化の模式図.矢印は37番アデニンのチオメチル化(ms2)を示す.(B)Cdk5rap1 ノックアウトマウスの心筋ミトコンドリアを電子顕微鏡により観察した.左図の野生型(WT)のミトコンドリアに比べ,右図のCdk5rap1 ノックアウト(Cdk5rap1 KO)マウスのミトコンドリアは異常な膨張(Swollen)が認められる.