日本生理学雑誌 第71巻 10号

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表紙の説明

IUPS(京都)
演題番号: WS5-2
演題: “TRPV2 Enhances Axon Outgrowth Through Membrane Stretch Activated Property in Developing Sensory and Motor Neurons”
演者: 柴崎貢志1, 2, 3
所属:岡崎統合バイオ・細胞生理, 生理研・細胞生理, 総研大・生理科学
TRPV1 (43℃ 以上), TRPV2 (52℃ 以上), TRPM8 (27℃ 以下で活性化)は温度感受性TRP チャネルに分類される. これらのチャネルは成体 (adult) において感覚神経に強い発現があり, TRPV1 とTRPM8 は全く別々のC 線維に, TRPV2 はAδ 線維に発現し (図の一番下adult の部分を参照), 外界の温度受容,痛み受容に寄与している. 胎生期マウスを用いて, 感覚神経細胞におけるこれらTRP チャネルの発現時期を調べたところ, 神経前駆細胞の出現にあわせて胎生10 日目 (E10) にTRPV2 発現が開始し, それに引き続き, TRPV1 (E13 から), TRPM8 (E16 から) が発現を開始し, TRPV2 と共存していた. このチャネル同士が共存する発現様式は, adult とは全く異なっていた. TRPV2は 52℃ 以上の侵害熱刺激を受容するが, 子宮内の胎仔がこのような環境に遭遇する機会はないため, 発達期特異的な全く別の役割を持つと考えた. その結果, TRPV2 は軸索伸長時の膜伸展刺激を感知し活性化する機構を見いだした. また,TRPV2 活性化は軸索伸長を促すことを突き止めた. この結果, 胎仔期においては軸索伸長を促進させる制御因子 (図の右側の赤い線の時期), 出生後には温度センサー (図の右側の黒い点線) とそのチャネル機能をダイナミックにモーダルシフトさせていることを見いだした.