脊椎動物における体液調節の比較生理学−飲水調節を中心として
- Comparative Physiology of Body Fluid Regulation in Vertebrates with Special Reference to Thirst Regulation
- 竹井 祥郎 (東京大学海洋研究所)
脊椎動物は,進化の過程で生息場所を淡水から海水あるいは陸上へと拡げてきたが,それに伴い体液調節機構も大きく進化した.多様な体液調節機構の中から共通性を抽出して,脊椎動物における体液調節機構の本質を探る試みを行う. [Review pp. 171-186] [On PubMed] | [JJP-Online]
中等度高度の nitric oxide 排出,赤血球脂質過酸化および superoxide dismutase への影響
- Effects of Moderate Altitude on Exhaled Nitric Oxide, Erythrocytes Lipid Peroxidation and Superoxide Dismutase Levels
- N.A. Guzel,H. Sayan,D. Erbas (Dept. of Physiol., Fac. of Med., Gazi Univ., Turkey)
ヒ トで 2,300 m,7 日間滞在は血漿nitriteの増加,赤血球 malondialdehyde の減少,SOD の増加,NO 排出の減少をもたらした.血中 NO の増加が赤血球脂質過酸化を抑制することが推測された. [Regular paper pp. 187-190][On PubMed] | [JJP-Online]
モルモット胃幽門前庭部輪走筋における自発性電気活動に対する K および Cl イオン除去と再投与の効果
- Effects of Removal and Reapplication of K+ and Cl– on Spontaneous Electrical Activity, Slow Wave, in the Circular Muscle of the Guinea-Pig Gastric Antrum
- 富田 忠雄,畑 忠善,徳納 博幸* (藤田保健衛生大学総医研,*名古屋大学医学部生理)
Slow wave は間質細胞に発生する電位 (driving potential, DP) で誘発されると考えられる.DPはK除去で短縮し,再投与で延長する.Cl を除くと著明に短縮し,K 再投与時の延長は消失する.これらの作用には筋小胞体の関与が示唆された. [Regular paper pp. 191-198] [On PubMed] | [JJP-Online]
短距離および長距離走者における激しい運動後の CO2 排出
- Excess CO2 Output Response during and after Short-Term Intensive Exercise in Sprinters and Long-Distance Runners
- 柚木 孝敬,堀内 雅弘,矢野 徳郎 (北大教育学部身体運動科学研究室)
激しい運動時には,乳酸蓄積によるpH低下で呼吸が促進し,CO2 が過剰に排出される.運動後の過剰 CO2 排出量は乳酸の増加に比例したが,短距離走者 (スプリンター) では長距離走者に比べて運動後の過剰 CO2 排出量が大きいことが判明し,乳酸に対する呼吸刺激の感受性に違いのあることが推測された. [Regular paper pp. 199-205] [On PubMed] | [JJP-Online]
Ischemic preconditioning の再潅流性不整脈抑制効果に対する Ca の重要性
- Involvement of Ca2+ in Antiarrhythmic Effect of Ischemic Preconditioning in Isolated Rat Heart
- 洪 葵,草野 研吾,森田 宏,藤本 良久,中村 一文,山成 洋,大江 透 (岡山大学医学部循環器内科)
短 時間反復性高濃度 Ca 負荷により短時間反復虚血時 (IPC) と同等の抗不整脈効果が得られ,ベラパミルによって IPC の抗不整脈効果は消失した.以上から,IPC の抗不整脈効果発現に Ca が重要な役割を果たしていることが示された. [Regular paper pp. 207-213] [On PubMed] | [JJP-Online]
セレクチンによるヒト消化管 Caco-2 細胞のイオントランスポートの活性化
- Activation of Transepithelial Ion Transport by Secretin in Human Intestinal Caco-2 Cells
- 福田方子,小原明人1,馬場忠雄,佐伯行一2 (滋賀医科大学第二内科・1基礎生物学,2基礎看護学)
セクレチンは単層 Caco-2 細胞の短絡電流 (Isc) を増加した.この Isc の増加は,NPPB 感受性の Cl− 電流および benzamil 感受性の Na+ 電流の増加によることが示唆された.Na+ 電流の増加には PKA が,Cl− 電流の増加には PKA と細胞内 Ca2+ の増加が関係するものと考えられる.また,セクレチンは体液側膜の Na+-HCO3− 共輸送体を活性化し,管腔側溶液へのアルカリ分泌を誘導することが示唆された. [Regular paper pp. 215-225] [On PubMed] | [JJP-Online]
血液を希釈した麻酔ネコの低酸素および高炭酸ガスに対する循環反応
- Hemodynamic Responses to Hypoxia and Hypercapnia during Acute Normovolemic Hemodilution in Anesthetized Cats
- A. Talwar,M. Fahim (Dept. of Physiol., Vallabhbhai Patel Chest Inst., Univ., of Delhi, India)
低 酸素と高炭酸ガス吸入の循環パラメーターへの効果がデキストランによる血液希釈 (Ht 低下) 時にどのように変化するかを麻酔ネコを用いて検討した.血液希釈時には低酸素によって心拍数と心拍出量は低下し,組織低酸素をもたらしやすいと結論した. [Regular paper pp. 227-234] [On PubMed] | [JJP-Online]
ヒト上皮細胞の膨張時放出 ATP による細胞容積調節のレセプター仲介性促進
- Receptor-Mediated Facilitation of Cell Volume Regulation by Swelling-Induced ATP Release in Human Epithelial Cells
- 出崎 克也1,津村 剛彦3,前野 恵美1,岡田 泰伸1,2 (1生理学研究所機能協関部門,2科学技術振興事業団戦略的基礎研究,3京都大学医学部内科学教室)
浸 透圧性膨張時には細胞内より ATP が放出される.この ATP の膨張後の容積調節 (RVD) への役割をヒト上皮細胞を用いて調べたところ,放出ATPは P2Y2 レセプターを刺激して膨張時の細胞内 Ca 動員とそれによる Ca 依存性 K チャネルの活性化を亢進して RVD を促進することが明らかとなった. [Regular paper pp. 235-241] [On PubMed] | [JJP-Online]
覚醒ラットにおける calcitonin-gene related peptide (CGRP) の膵外分泌に対する中枢性抑制効果
- Inhibitory Effect of Central Calcitonin-Gene Related Peptide (CGRP) on Pancreatic Secretion in Conscious Rats
- 金井 節子,増田 正雄,鈴木 伸治,太田 稔, 吉田 由紀1,船越 顕博2,宮坂 京子1 (1東京都老人総合研究所臨床生理部門,1国立病院九州がんセンター消化器部)
覚 醒ラットで,calcitonin-gene related peptide (CGRP) の脳室投与の膵外分泌および CCK 分泌に対する作用をしらべた.CGRP は CCK 分泌および膵外分泌の両方を抑制した.この抑制作用は,a アドレナリン受容体拮抗剤により減弱したが消失はせず,その他の経路の介在が示唆された. [Regular paper pp. 243-248] [On PubMed] | [JJP-Online]
培養オポッサム近位尿細管細胞における内向き整流性 K+ チャネルの蛋白脱リン酸化酵素 1 型および 2A 型による制御
- Regulation of Inwardly Rectifying K+ Channel in Cultured Opossum Proximal Tubule Cells by Protein Phosphatases 1 and 2A
- 久保川 学,中村 一芳,平野 順子,吉岡 芳親,中屋 重行,森 禎章*,窪田 隆裕* (岩手医大医学部第二生理,*大阪医大第二生理)
培養オポッサム近位尿細管細胞の内向き整流性 K+ チャネルは脱リン酸化酵素 1 型および 2A 型 (PP-1,PP-2A) により不活性化され,それは PP-1 および PP-2A が A キナーゼによるリン酸化部位を脱リン酸化した結果であると考えられた. [Regular paper pp. 249-256] [On PubMed] | [JJP-Online]
イヌ心臓におけるカフェインの酸素浪費効果を特徴づける力学エナジェティクス
- Mechanoenergetics Characterizing Oxygen Wasting Effect of Caffeine in Canine Left Ventricle
- 高砂 利行1,2, 後藤 葉一1, 畑 勝也1, 佐伯 彰夫1, 西岡 武彦1, タッド・テイラ ー1, 入部 玄太郎3, 毛利 聡3, 清水 壽一郎3, 荒木 淳一3, 菅 弘之1,3 (1国立循環器病センター, 2馬場病院内科, 3岡山大学医学部生理学第二講座)
冠 潅流中低濃度カフェインの心臓酸素浪費効果を心収縮性の酸素コストの面からイヌ 摘出交叉潅流心臓標本で解析して,収縮性を亢進させる場合の酸素コストがカルシウ ムに比べて 40% も大きいことが初めて示された. [Regular paper pp. 257-265] [On PubMed] | [JJP-Online]
ラット背外側中隔核のシナプス伝達に対するコルチコステロイドの作用
- Effects of Corticosteroids on Synaptic Transmission in Rat Dorsolateral Septal Nucleus
- 鶴崎 政志,赤須 崇 (久留米大学医学部生理学第二講座)
微 小電極法並びに single electrode voltage-clamp 法を用いて,ラット背外側中隔核細胞に於けるコルチコステロイドのシナプス伝達に対する作用を検討した.プレドニゾロン (100μM) は PSP を増大し,fast 及びs low IPSP は抑制した.GABA 及び glutamate 誘起電流は抑制しないことから,この作用は GABA の放出抑制により行われていることが示唆された. [Regular paper pp. 267-272] [On PubMed] | [JJP-Online]
クレアチン投与による走運動改善のバイオメカニズム
- The Biomechanic Origin of Sprint Performance Enhancement after One-Week Creatine Supplementation
- J.M. Schedel,P. Terrier,Y. Schutz (Inst. of Physiol., Fac. of Med., Univ. of Lausanne, Switzerland)
7 名のスプリンターに1週間クレアチンを投与し,走運動時の最大速度,ストライド数および歩幅をプラセボ群と比較した.その結果,クレアチンの投与群では, 走速度およびストライド数が有意に増加した.この結果はクレアチン投与により筋弛緩時間の短縮によるものと考えられる. [Short communication pp. 273-276] [On PubMed] | [JJP-Online]
細胞膨張で活性化されるヒト上皮細胞 Cl− チャネルの容積感受性機序
- Volume Expansion Sensitivity of Swelling-Activated Cl– Channel in Human Epithelial Cells
- 森島 繁1,2,清水 貴浩1,木田 肇3,岡田 泰伸1,2 (1生理学研究所機能協関部門,2科学技術振興事業団戦略的基礎研究,3京都大学医学部内科学教室)
容積感受性 Cl− チャネルの活性化メカニズムを浸透圧性に膨張させたヒト上皮細胞を用いて調べた.その結果,本チャネルの全細胞電流は,細胞容積や膜張力や静水圧の変化で はなく,細胞直径の二乗に最もよく相関し,その容積感受性はサイトカラシンで増加した.従って,細胞骨格系の関与するバネエネルギーが重要な役割を果たす ことが示唆された. [Short communication pp. 277-280] [On PubMed] | [JJP-Online]
心不全モデルでアポトーシスDNAフラグメンテーションを微量検出するため半定量 PCR 法
- A Semi-Quantitative PCR Method for the Detection of Low Levels of Apoptotic DNA Fragmentation in a Heart Failure Model
- C.S. McLachlan,J.L. Yin*,C. Driussi*,P.R. Jusuf,B. Hambly*,M.A. McGuire (Dept. of Pathol., Univ., of Sydney, Australia,*Dept. of Cardiol., Royal Prince Alfred Hospital, Camperdown, NSW, Australia)
アポトーシスを示す細胞の 割合は普通 2% 以下であり,通常の方法による検出は困難である.我々はこれを検出するための新しい方法を作り,心不全モデルに適用したところ,その初期から検出可能であ ることを確認できた. [Short communication pp. 281-284] [On PubMed] | [JJP-Online]
ヒマラヤ登山における血中エリスロポエチンと乳酸の相関
- Correlation between Erythropoietin and Lactate in Humans during Altitude Exposure
- 坂田 進,清水 悟,岸 隆司,平井 和子,毛利 一平,大野 佳美,上田 正次 (奈良県立医科大学第二生理学教室)
健 常日本人 4 名のヒマラヤ山岳地帯 (高度 3500 m) への登山において,血中エリスロポエチン濃度と血中乳酸濃度は高度上昇に伴って増加し,両者間に良い正相関があった.血中エリスロポエチン濃度が嫌気的状 態の指標として有効であることが示唆された. [Short communication pp. 285-288][On PubMed] | [JJP-Online]