JJP和文要旨 vol 50 no 1

Past, Present and Future of the JJP

  • Past, Present and Future of the JJP
  • 菅 弘之 (JJP 編集委員長 (2000))

創刊 50 年にあたり,JJP のこれまでの到達点を概観. [Editorial pp. 1-1] [On PubMed] | [JJP-Online]

ヒトにおける上気道反射の生理学的意義と病態生理学的意義について

  • Physiological and Pathophysiological Implications of Upper Airway Reflexes in Humans
  • 西野 卓 (千葉大学医学部麻酔学教室)

上 気道には多くの重要な機能が備わっているが,とりわけ上気道反射によって支えられている気道防と気道の開存を保持する機能は生命維持の上から重要である. 上気道反射は気道の粘膜下や粘膜内の受容器の興奮によって生じるが,反射効果は睡眠,麻酔,呼吸ドライブなど多くの要因によって修飾される. [Review pp. 3-14] [On PubMed] | [JJP-Online]

低酸素に対する呼吸反応の神経性統御機序

  • Neuronal Mechanisms Mediating the Integration of Respiratory Responses to Hypoxia
  • 林 文明,福田 康一郎 (千葉大学医学部第2生理)

低 酸素に対する呼吸反応を引き起こす神経性機構の統御メカニズムを総括した.低酸素に対する呼吸反応を促進性と抑制性に区分し,それぞれを引き起こす神経回 路,関与する神経化学伝達物質および反応の時間的変化の機序を考察して全体像をまとめた. [Review pp. 15-24] [On PubMed] |[JJP-Online]

マウス腸間膜における生体内リンパ循環動態研究装置の開発

  • Development of an Experimental Apparatus for Investigating Lymphatic Pumping Activity of Murine Mesentery In Vivo
  • 小野 伸幸,水野 理介*,野尻 浩*,大橋 俊夫* (長野高専電子制御工学科,*信州大学医学部第一生理学教室)

マ ウスの腸間膜リンパ循環動態を生体内で観察できる生体顕微鏡システムを開発した.その装置を用いて実験を行った結果,DDY マウスの腸間膜リンパ管は,自発性収縮を示し,またノルエピネフリンおよびテトラエチルアンモニウムによって収縮を示すことが判明した. [Regular paper pp. 25-31] [On PubMed] | [JJP-Online]

In vivo 家兎迷走神経刺激の心拍数及び心拍変動に対する影響

  • Effect of Constant and Intermittent Vagal Stimulation on the Heart Rate and Heart Rate Variability in Rabbits
  • 岩尾 哲,米持 英俊,中川 幹子,高橋 尚彦*,犀川 哲典*,伊東 盛夫 (大分医科大学臨床検査医学,*大分医科大学内科第一)

心 拍数と心拍変動 (HRV) は,自律神経活動の指標として用いられており,心疾患の生 命予後との関連も報告されている.我々は,家兎において迷走神経直接刺激の心拍数と心拍変動に対する影響を検討した.無刺激時と比較し持続刺激時,断続刺 激時とも,mRR は延長したが,呼吸周波数に一致した成分は変化せず,断続刺激時のみ on-off の周波数に一致した 0.5 Hz に巨大な成分が出現した.心臓迷走神経刺激による心拍変動は,同程度にmRRの延長をきたす刺激においても異なった結果を示す可能性が示唆される. [Regular paper pp. 33-39] [On PubMed] | [JJP-Online]

長期ベッドレスト中のカウンターメジャーの有無に対するヒトヒラメ筋線維の組織化学的反応

  • Histochemical Responses of Human Soleus Muscle Fibers to Long-Term Bedrest with or without Countermeasures
  • 大平 充宣,吉永 智雄,埜中 征哉1,大原 誠,吉岡 利忠2,山下(後藤) 勝正2,泉龍 太郎3,安川 浩3,関口 千春4,ボリス シェンクマン5,イネッサ コズロフスカヤ5 (鹿屋体育大学,1国立精神・神経センター,2聖マリアンナ医科大学,3宇宙環境利用推進センター,4宇宙開発事業団,5医学生物学研究所)

2 または 4 カ月間のベッドレスト中のカウンターメジャーがヒトヒラメ筋線維のタイプ及び横断面積に及ぼす影響を追求した.その結果,筋の伸展はベッドレストによる筋 線維の萎縮を防止するが,速筋化の抑制には効果がなかった. [Regular paper pp. 41-47] [On PubMed] | [JJP-Online]

単収縮および強縮により疲労した骨格筋単一筋繊維における機械的収縮能力に対する温度の効果

  • The Effects of Temperature on the Mechanical Performance in Fatigued Single Muscle Fibers of the Frog Induced by Twitch and Tetanus
  • 稲村 直子,藤重 綾子,三宅 進一,小野 陽,土屋 禎三 (神戸大学理学部生物学教室)

カ エル骨格筋単一筋繊維に連続的に単収縮あるいは強縮を与え,聴力低下すなわち疲労を発生させ,張力変化時間過程,長さ-張力関係,短縮速度などを測定し, それらに対する温度の効果を調べた.結果より単収縮と強縮では疲労機構が異なることが示唆された. [Regular paper pp. 49-57] [On PubMed] | [JJP-Online]

健常高齢者の起立耐性失調中のノルエピネフリン (NE),エピネフリン (EP) 反応性

  • Norepinephrine and Epinephrine Responses during Orthostatic Intolerance in Healthy Elderly Men
  • T. Gabbett,G. Gass,E. Gass,N. Morris,G. Bennett1,L. Thalib2 (School of Physiol. and Exercise Sci., Fac. of Health Sci., Griffith Univ. Gold Coast, Australia,1Midical Division, Nepean Hospital Penrith, Australia,2Shool of Public Health, Fac. of Health Sci., Griffith Univ. Logan, Australia)

健常高齢者では起立耐性失調者の血中NE濃度増加は耐性者に比べて少なく,失調者で血圧低下が大であったにも係わらず血中EP濃度増加は両者で差が無く,若年者と対照的であった. [Regular paper pp. 59-66] [On PubMed] | [JJP-Online]

ラット破骨細胞への浸透圧性膜伸展刺激は,細胞内 Ca2+ を上昇させ,その骨吸収活性を抑制する

  • Osmotic Membrane Stretch Increases Cytosolic Ca2+ and Inhibits Bone Resorption Activity in Rat Osteoclasts
  • 都築 尊,岡部 幸司*,鍛冶屋 浩*,羽生 哲也 (福岡歯科大学歯科補綴学・*口腔生理学)

破骨細胞へのメカニカルストレス (MS) の効果を,低浸透圧溶液による膜伸展を用いて,細胞内 Ca2+ ([Ca2+]i) と細胞骨を指標に検討した.MS は stretch-activated channel を介した [Ca2+]i 上昇により,破骨細胞の骨吸収能力を抑制することが示唆された. [Regular paper pp. 67-76] [On PubMed] | [JJP-Online]

心房細動不整脈下イヌ左心室の実効動脈エラスタンス (Ea)

  • Effective Arterial Elastance of Irregular Beats during Atrial Fibrillation in Canine Left Ventricle
  • 三谷 英信1,山口 裕己1,森田 照正1,大島 祐1,清水 壽一郎,伊藤 治男,荒木 淳一,高木 都2,佐野 俊二1,菅 弘之 (岡山大学医学部生理学第二講座・1心臓血管外科学講座,2奈良県立医科大学生理学第二講座)

開胸イヌ心房細動下不整脈中の左心室の実効動脈エラスタンス (Ea) の解析を行った実験研究であり, (Ea) 並びにそれと収縮性指標 Emax との比などの不整脈に伴う変動の特徴が初めて明らかにされた興味ある論文である. [Regular paper pp. 77-89] [On PubMed] | [JJP-Online]

ハロタン麻酔ラットにおける人工低体温下の低酸素に対する換気および頸動脈化学受容器の反応

  • Ventilation- and Carotid Chemoreceptor Discharge-Response to Hypoxia during Induced Hypothermia in Halothane Anesthetized Rat
  • 丸山良子,福田康一郎* (宮城大学看護学部,*千葉大学医学部第 2 生理)

人工低体温下の低酸素換気応答と頸動脈小体化学受容器の感受性ハロタン麻酔深度を調節したラットで検討した.酸素消費量で補正した換気量および化学受容器活動の PaO2 反応曲線から見た低酸素に対する感受性は低体温下でも維持されることを証明した. [Regular paper pp. 91-99] [On PubMed] | [JJP-Online]

ラットおよびモルモット摘出駆出心臓の等容性弛緩圧波形の4変数非線形回帰

  • Four-Parametric Non-Linear Regression Fit of Isovolumic Relaxation in Isolated Ejecting Rat and Guinea Pig Hearts
  • S.F.J. Langer (Inst. of Physiol., Free Univ. Berlin, Germany)

摘 出駆出左心室等容性弛緩圧波の従来型指数関数時定数での特徴付けにおける問題点を解決する目的で4変数非線形関数を考案し,その回帰解析から新関数の有用 性を証明した興味ある研究結果である.この新関数の病的心への応用が期待できる. [Regular paper pp. 101-113] [On PubMed] |[JJP-Online]

高二酸化炭素及び高酸素分圧下で脳賦活によって誘発される局所血流変化

  • Modulation of Evoked Cerebral Blood Flow under Excessive Blood Supply and Hyperoxic Conditions
  • 松浦 哲也,藤田 英明,柏倉 健一,菅野 巌* (JST 秋田,*秋田脳研)

麻 酔ラットと用いて皮質体性感覚野の局所電気活動に伴う局所血流の増加について高炭酸ガスと高酸素の影響を検討した.脳局所血流の調節が活動状態ばかりでな く,酸素化の程度によっても大きく影響されることを明らかにした興味ある研究内容である. [Regular paper pp. 115-123] [On PubMed] | [JJP-Online]

若年ならびに加齢ラットの眼組織における虚血再灌流

  • Postischemic Reperfusion in the Eyes of Young and Aged Rats
  • 石原 美香1,2, 中野 俊也3, 大浜 栄作3, 河合 康明1 (鳥取大学医学部 1第二生理学教室・2眼科学教室・3脳幹性疾患研究施設脳神経病理学教室)

眼 組織における虚血再灌流時の血流変化と虚血 6 時間後の網膜組織の変化を若年ラットと加齢ラットとで比較検討した.虚血再灌流時の眼循環動態および形態学的変化において加齢による影響のあることが示唆 された. [Regular paper pp. 125-132] [On PubMed] | [JJP-Online]

鍼灸刺激の鎮痛効果における広汎性侵害抑制調節の関与

  • Diffuse Noxious Inhibitory Controls in Anti-Nociception Produced by Acupuncture and Moxibustion on Trigeminal Caudalis Neurons in Rats
  • 村瀬 健太郎,川喜田 健司 (明治鍼灸大学生理学教室)

ラッ ト三叉神経尾側亜核の侵害受容ニューロン活動を指標として,鍼灸刺激とピンチ刺激の鎮痛効果を比較検討した結果,鍼灸刺激による鎮痛効果には,侵害受容器 を介した広汎性侵害抑制調節 (DNIC) が関与していることが示唆された. [Regular paper pp. 133-140] [On PubMed] | [JJP-Online]

ヘッドダウンティルトウサギにおける脳浮腫発生の検討

  • Does Edema Formation Occur in the Rabbit Brain Exposed to Head-Down Tilt?
  • 下山 玲子1,2,宮田 元3,大濱 榮作3,河合 康明1 (鳥取大学医学部 1生理学・2眼科学・3神経科学)

ウ サギ 45 度 HDT モデルにおける脳浮腫発生の有無について,脳水分含有量計測と組織学的検討を行った.2 日ないし 8 日間 HDT 群にて水分含有量に有意な増加はなく,組織学的に明らかな浮腫を示す所見は得られなかった. [Regular paper pp. 141-147] [On PubMed] | [JJP-Online]

肝臓のスーパオキシド・ジスムターゼ活性,血中硝酸塩と甲状腺ホルモンレベルに対するメラトニンの作用

  • The Effect of Melatonin on Liver Superoxide Dismutase Activity, Serum Nitrate and Thyroid Hormone Levels
  • B. Ozturk,S. Coskun,D. Erbas,E. Hasanoglu* (Depts. of Physiol. and *Pediatric Nephrol., Fac. of Med., Univ. of Gazi, Turkey)

ラッ トの日内リズム実験から,血中のメラトニン増加は,肝臓の活性酸素を除去するスーパーオキシド・ジスムターゼを増加し,血中甲状腺ホルモン (TSH. T3.T4) や硝酸塩レベルを減少さすことがわかった. [Regular paper pp. 149-153] [On PubMed] | [JJP-Online]

陸上ランナーにおける漸増的運動中の動的心拍数反応

  • Heart Rate Response during Incremental Exercise in Master Runners
  • A. Lucia,A. Carvajal1,M. Perez,A. Boraita2,L. Serratosa2,J.L. Chicharro1 (Dept. de Ciencias Morfologicas y Fisiologia, Univ. Europea de Madrid, Spain,1Univ. Complutense de Madrid, Spain,2Centro Nacional de Investigacion y Ciencias del Deporte, Consejo Superior de Deportes (CSD), Spain)

13 名の陸上ランナーで漸増的トレッドミル作業中の心拍数の動的反応を分析した.心拍数/走行スピード比を示す関係の直線の下方への変曲は,全ランナーの 31% 以下にしか認められず,大多数のランナーでは下方へ向けた変曲点はなかった. [Short communication pp. 155-158] [On PubMed] |[JJP-Online]

ラット心冠動脈の一過性結紮・再灌流による p53 蛋白の発現

  • Upregulation of P53 Protein in Rat Heart Subjected to a Transient Occlusion of the Coronary Artery Followed by Reperfusion
  • 謝 忠琳,小山 富康,阿部 和厚,藤井 幸子,澤 洋文,長嶋 和郎 (北大電子研)

ア ポトーシス誘導性因子 p53 が,心臓において虚血再灌流によって発現することについて従来の研究報告は否定的であった.ところがランゲンドルフ灌流装置に取り付けたラット心につい て,虚血再灌流により p53 mRNA の発現が増加することが本年 11 月の AHA において報告された.この報告に対応する p53 蛋白の増加を in vivo 虚血再灌流ラット心において免疫抗体法により確かめた.すなわち麻酔ラットを開胸し冠動脈を 45 分間結紮した後解除・再灌流し,途中開胸して覚醒・自発呼吸下に 4 時間維持した.この時点で再麻酔下に心臓を切り出し,パラフィン包埋切片をえた.unmasking 操作には超音波加熱とトリプシン処理を加えた.ベクター社の DO7 を用いて免疫抗体染色を行った結果,一過性虚血暴露部とその周辺域の多くの心筋細胞核で p53 蛋白が染め出された. [Short communication pp. 159-162] [On PubMed] | [JJP-Online]

線条体ラットの異常空中立ち直り反射

  • Abnormal Air-Righting Reflex in Striatal Rats
  • 増田 健,山口 峻司 (山形大学理工学研究科生体センシング機能工学)

高 次脳の動的姿勢制御機構を理解するために,除脳ラットの空中立直り反射を比較した.視床動物,中脳動物はほぼ正常な立ち直り反射を示した.線条体動物は異 常運動を示した.線条体を含む高次脳は,皮質との連絡が断たれると,脳幹の立ち直り反射中枢に干渉し協調を破壊する. [Short communication pp. 163-166] [On PubMed] | [JJP-Online]

純酸素吸入は収縮期の酸素消費を増大させない

  • Increase in O2 Delivery with Hyperoxia Does Not Increase O2 Uptake in Tetanically Contracting Dog Muscle
  • 上月 久治,坂田 進,大賀 好美,三澤 裕美,岸 隆司,高木 都 (奈良県立医科大学第二生理学教室)

血 液の酸素運搬性能は物理的に溶存した酸素がヘモグロビン結合酸素より酸素輸送に有利であると考えられている.純酸素吸入時の収縮筋の酸素消費は筋静脈血酸 素分圧の増大にもかかわらず増加しないことが明らかになった.動静脈シャントと酸素拡散能の低下がその原因と推測される. [Short communication pp. 167-169] [On PubMed] | [JJP-Online]