JJP和文要旨 vol 49 no 6

一酸化窒素による延髄の中枢性循環調節メカニズム

  • Central control mechanisms of circulation in the medulla oblongata by nitric oxide
  • 前田正信,井上正岩,高尾聖二,中井正継* (産業医科大学産業生態科学研究所応用生理学,*国立循環器病センター研究所)

延髄の心臓血管中枢における一酸化窒素 (nitric oxide, NO) の役割について総説した.一酸化窒素合成酵素 (nitric oxide synthase NOS) の脳内の解剖学的分布,NOS 阻害剤を静脈内あるいは脳室内に投与した時の循環への影響,NO 産生剤または NOS 阻害剤を延髄孤束核や延髄腹外側部に微量注入した時の循環への影響,それらの部位の電気生理学的研究,さらに新しい方法としての分子生物学的方法を用いた 研究を紹介した. [Review pp. 467-478] [English abstract]

Haloperidol の心筋細胞内 Ca2+ 動態に対する影響

  • Haloperidol prolongs diastolic phase of Ca2+ transient in cardiac myocytes
  • 石田 英之,星合清隆,星合美奈子,源河朝広,広田有希*,中澤博江 (東海大学医学部生理科学,*蓮見癌研究所)

Haloperidol (HPL) による重篤な不整脈の機序を検討するため,心筋細胞内 Ca2+ ([Ca2+]i) transient への HPL の影響を培養心筋細胞を用いて検討した.HPL は,[Ca2+]i transient の下降相を延長させた.HPL は,Na+/Ca2+ exchanger の機能を抑制しなかったが,筋小胞体の Ca2+ 貯蔵量を低下させ,筋小胞体からの Ca2+ を誘発した. [Regular paper pp. 479-484][English abstract]

ネコ大脳皮質体性感覚野 (SI) の歯髄駆動細胞に対する扁桃体中心核条件刺激の効果

  • Effects of conditioning stimulation of the central amyglaloid nucleus on tooth pulp-driven neurons in the cat somatosensory cortex (SI)
  • 川原田啓,鎌田健一,松本範雄 (岩手医科大学歯学部口腔生理学講座)

扁桃体中心核 (ACE) の電気的条件刺激は,潜時の短い歯髄駆動細胞には影響を与えず,潜時が 20 msec 以上の細胞の約半数の応答を 74% (n = 35) 抑制した.この ACE の抑制効果は naloxone によって影響を受けなかったがヒスタミン H1 拮抗剤によって約 50% 減弱した. [Regular paper pp. 485-497] [English abstract]

ラットのスタン心臓におけるテトランドリンの収縮機能と微小血管透過性への影響

  • The effects of tetrandrine on the contractile function and microvascular permiability in stunned myocardium in rats
  • Jinming Chen, Zonggui Wu, Sicong Chen, Xiaoqi Gong, Jigen Zhong, Guoyuan Zhang (Dept. of Cardiol., Changzheng Hospital Second Military Med. Univ., China)

テトランドリン投与後のラット生体位虚血後再潅流スタン心臓では,微小循環透過性亢進が抑制されることにより,心筋内 FITC-BSA (アルブミンの一種) 増加抑制,カルシウム流入抑制が起き,収縮性減弱が抑制されたと考えられた. [Regular paper pp. 499-506] [English abstract]

固形食または液状食摂取ラットにおける耳下腺アミラーゼ分泌と胃内容浸透圧の関係

  • Relationship between parotid amylase secretion and osmolality in the gastric contents of rats fed a pelleted or liquid diet
  • 倉橋昌司,猪股孝四郎* (北海道医療大学看護福祉学部生命基礎科学講座・*歯学部口腔生理学講座)

ラットにおいて,固形食の摂取に伴い耳下腺から分泌されアミラーゼは,胃内でデンプンからの還元糖の生成を介胃内容の浸透圧を上昇させる.このような胃内容浸透圧の昇は液状食摂取の場合も見られる. [Regular paper pp. 507-512] [English abstract]

ラット交叉灌流心臓の収縮期末圧容積関係曲線から得られる収縮性の酸素コストの新しい指標

  • New index for oxygen cost of contractility from curved end-systolic pressure-volume relations in cross-circulated rat hearts
  • 辻 毅嗣*,小林修一*,北村惣一郎**,谷口繁樹*,菅 弘之***,高木 都 (奈良県立医科大学生理学第二講座・*第三外科学講座,**国立循環器病センター,***岡山大学医学部生理学第二講座)

ラット交叉灌流心臓左心室の収縮期末圧容積関係は曲線で,一拍毎の心筋酸素消費量 (Vo2)—収縮期圧容積面積 (PVA) 関係は直線である.Ca2+ により収縮性を変えて得られた PVA-independent Vo2と新しい収縮性の指標 (eESP/ESV)mLVV は直線を示し,その勾配は収縮性の酸素コストを表す. [Regular paper pp. 513-520] [English abstract]

モルモット胃前庭部の輪走筋における自発性電気活動 slow wave に対するモノヨード酢酸の作用

  • Effects of iodoacetate on spontaneous electrical activity, slow wave, in the circular muscle of the guinea-pig gastric antrum
  • 荻野佳代,高井 章*,石田行知**,富田忠雄 (藤田保健衛生大学総医研,*名古屋大学医学部生理,**三菱化学生命研)

モルモット胃輪走筋の slow wave はグルコースが存在しないと IAA に より殆ど影響を受けないが,グルコースの再投与で強い抑制を受ける.この抑制は代謝産物の蓄積によると考えられる. [Regular paper pp. 521-526][English abstract]

メダカ嚢胚期細胞においてフィブロネクチンは局所的 [Ca2+]i の上昇を介して偽足生成による細胞運動を引き起こす

  • Fibronectin induces pseudopod formation and cell migration by mobilizing internal Ca2+ in blastoderm cells from medaka fish embyros
  • 重本 尚 (神戸大学医学部第二生理学教室)

メダカ胞胚細胞においてフィブロネクチンは細胞内 [Ca2+]i 動員を介して偽足生成し,細胞の移動を引き起こすことを明らかにした.これは原口陥入等の嚢胚における細胞移動を生理学的に説明する.またこのときの,細 胞内の Ca 動員経路についても検討をくわえている. [Regular paper pp. 527-539] [English abstract]

軽症喘息患者へのロイコトリエン受容体拮抗薬投与後の呼気 NO

  • Decreased exhaled nitric oxide in mild persistent asthma patients treated with a leukotriene receptor antagonist, pranlukast
  • 小林弘祐,高橋裕子,三藤 久,畑石隆治,崔 泰林,田中直彦,川上 倫*,冨田友幸 (北里大学医学部)

4 週間のロイコトリエン受容体拮抗薬の投与が軽症喘息患者の増加ていた呼気 NO を正常レベルにまで減少させた.このことから,軽症喘息患者の呼気NO濃度の増加にはロイコトリエンが関与している可能性が示された. [Short communication pp. 541-544] [English abstract]

アセチルコリン刺激時モルモット胃幽門粘液細胞において高 [K+]o がひきおこした Ca2+ 流入の抑制: G 蛋白による Ca2+ 流入経路の調節

  • Inhibition of Ca2+ entry caused by depolarization in acetylcholine-stimulated antral mucous cells of guinea pig: G protein regulation of Ca2+ permeable channels
  • 中張隆司, 吉田秀世,今井雄介,藤原祥子*,大西敦子*,島本史夫*,勝 健一* (大阪医科大学生理学・*第2内科学)

単離モルモット胃幽門粘液細胞のアセチルコリン刺激時 Ca2+ 流入に対する膜電位の効果について検討した.膜電位は,細胞外のK濃度変化,或は nystatin を加える事で変化させた.結果は脱分極条件下ではアセチルコリン刺激時 Ca2+ 流入は抑制され,反対に過分極条件下では Ca2+ 流入は増加した.この細胞を百日咳毒素(G 蛋白阻害剤)で処理すると脱分極条件下においても Ca2+ 流入は増加した.このことから,胃幽門粘液細胞における Ca2+ 流入機構は膜電位感受性 G 蛋白により制御されている事が示唆された. [Short communication pp. 545-550] [English abstract]

運動時の唾液アミラーゼ,血中乳酸および筋電図の反応

  • The salivary amylase, lactate and electromyographic response to exercise
  • Jose L Chicharro,Margarita Perez*,Alfredo Carvajal**,Fernando Bandres***,Alejandro Lucia* (Esculela de Enfermeria・**Facultad de Medicina・***Dept. de Med. Legal, Univ. Complutense de Madrid, Apain Fisioterapia y Podologia Facultad de Medicina, Universidad, Spain,*Dept. de Ciencias Morfologicas y Fisiologia, Univ. Europea de Madrid, Spain)

トレーニングした 12 人の若い男性に,徐々に増加する運動疲労テストを行い,血液と唾液を採取して血中乳酸と唾液アミラーゼ閾値を調べた.また外側広筋の筋電図を記録して筋電 図閾値を調べた.乳酸,唾液アミラーゼ閾値,筋電図閾値に,運動強度に対応した有意な変化は見とめられなかった. [Short communication pp. 551-554]  [English abstract]