パラニューロンその他の分泌細胞の細胞内および細胞間カルシウムシグナル
- Intra- and Intercellular Ca2+ Signaling in Paraneurons and Other Secretory Cells
- 菅野富夫(矢内原研究所)
形態,機能および代謝においてニューロンと同様の特性を有する一群の内分泌・受容器細胞をパラニューロンと呼び,情報伝達物質の共通性に加えて細胞膜イオ ンチャネルにも共通性を認め,活動電位発生の基盤となる.膵島パラニューロンは,細胞間結合において,腸間内胚葉由来の細胞特性を保持している. [Review pp. 219-227] [English abstract]
ラット左心室毛細血管網の適応変化
- Adaptive Changes in the Capillary Network in the Left Ventricle of Rat Heart
- 小山富康,謝 忠琳,高 明,鈴木淳一*,Sanjay Batra**(北大,*北海道教育大冬季スポーツ研,**学術振興会招弊研究員)
ラットの冠循環系から得られる内皮細胞の培養から,細動脈性と細静脈性毛細血管を弁別する染色法の妥当性を論じ,寒冷暴露,運動訓練,β-アゴニスト,虚 血,虚血再潅流の左心室毛細血管網に及ぼす影響を毛細血管密度,細動・静脈性毛細血管の増減から概観した.[Review pp. 229-241] [English abstract]
拡散性酸素輸送による心筋のエネルギー代謝制御
- Impact of Diffusional Oxygen Transport on Oxidative Metabolism in the Heart
- 高橋英嗣,土居勝彦(山形大医学部第一生理)
ミトコンドリアが好気的に ATP を産生するために必要な酸素分圧は,約 0.1 Torr以下であり,これは動脈血酸素分圧の約 1/1000 である.したがって,少なくとも正常心筋では,細胞内への酸素輸送が好気的 ATP 産生の制御因子とはならないように思える.しかしながら,最近の in vivo での心筋細胞質酸素分圧計測から,毛細血管と心筋細胞膜の間(細胞外スペース)に拡散抵抗に起因するきわめて大きな酸素分圧の勾配が生じることがわかっ た.さらに,細胞の酸素消費量増加に伴い,酸素分圧の大きな勾配が細胞内部にも形成されることも示された.これらの結果は,毛細血管血から細胞内ミトコン ドリアへの拡散性酸素輸送が,ミトコンドリアにおける酸素分圧を決定する重要な因子となることを示唆する.本稿では,拡散性酸素供給による好気的心筋代謝 の制御について定量的に検討した.[Review pp. 243-252] [English abstract]
ヒトの自律機能覚醒に対する喫煙の短期及び長期効果
- Immediate and Sustained Effects of Smoking on Autonomic Arousal in Human Subjects
- Craig Steven McLachlan*,**,Ian Spence*,Paul Satchell**(*Dept. of Pharmacol.,**Gordon Craig Lab., Dept. of Surg., Univ. of Sydney, Australia)
ヒトの発汗・自律機能に及ぼす喫煙効果を調べた.14 名(11 名は男性,3 名は女性)に喫煙させ,その 60 分後まで調べたところ,喫煙直後,12 名で発汗亢進,そのうち 4 例でその後も発汗持続した.発汗反応が見られなかった 2 名で皮膚血流を測定したところ喫煙に伴い,血流減少が見られた.[Regular paper pp. 253-259] [English abstract]
麻酔ラットにおける動脈圧受容器の活性化は体位-交感神経反射を抑制する
- Excitation of Baroreceptors Depresses A- and C-Components of the Somato-Cardiac Sympathetic Reflex in Anesthetized Rats
- 李 為民1,劉 霞2,熊田 衛3,佐藤昭夫4(1東大医学部生理,2上海第二医科大附属瑞金医院心臓内科,3聖路加看護大生理,4東京都老人総合研究所自律神経)
動脈圧受容器反射が体位-交感神経反射に及ぼす効果を麻酔ラットを用いて調べた.フェニレフリン静脈内皮投与による血圧上昇は後肢脛骨神経刺激によって心臓交感神経と頚動脈洞神経の切断によって消失した.[Regular paper pp. 261-266] [English abstract]
受動的体位変換にともなう呼吸反応:健常人の検討
- Effect of Posture Change on Control of Ventilation
- 吉崎英清,吉田明夫,林 文明,福田康一郎(千葉大医学部第二生理)
臥位から立位で,CO2-換気応答曲線が上方変移による過換気を伴った終末呼気(経皮)炭酸ガス分圧の低下が招来された.CO2-換気応答曲線の上方変移には下肢筋等の求心性活動の関与が示唆された.[Regular paper pp. 267-273] [English abstract]
補足運動野および一次体性感覚野からの入力によりサル一次運動野で誘発されるニューロン応答における NMDA および非 NMDA 受容体の関与:運動課題遂行時の細胞活動研究
- Involvement of NMDA and Non-NMDA Receptors in the Neuronal Responses of the Primary Motor Cortex to Input from the Supplementary Motor Area and Somatosensory Cortex: Studies of Task-Performing Monkeys
- 嶋 啓節,丹治 順(東北大医学部生体システム生理)
運動課題に伴うサル一次運動野の細胞活動および電気刺激で誘発される皮質間入力にはいずれも NMDA・非 NMDA グルタミン酸受容体の両者が関与していたが,体性感覚野入力には非 NMDA,補足運動野入力には NMDA 受容体の関与が相対的に強いことが示唆された.[Regular paper pp. 275-290] [English abstract]
持続的低酸素が呼吸困難感に及ぼす影響
- Influence of Sustained Hypoxia on the Sensation of Dyspnea
- 長南達也,岡部慎一,飛田 渉,佐藤 誠,菊池喜博,瀧島 任,白土邦男(東北大医学部第一内科)
呼吸困難感 (visual analog scale 法) におよぼす持続的低酸素 (Sao2 = 80%) と軽度労作 (bicycle ergometer) の影響を健康成人で調べた.低酸素は当初呼吸困難感を増強,後に,抑制し,また,労作による呼吸困難感を軽減させた.呼吸困難感発生の機序解明に関する興 味ある論文である.[Regular paper pp. 291-295] [English abstract]
アドレナリン刺激に対するカエル皮膚の機械的反応
- Repetitive Mechanical Responses of the Amphibian Skin to Adrenergic Stimulation
- I. Tasaki(Natl. Inst. of Mental Health, NIH, USA)
かえるの神経-皮膚標本を用いて,アドレナリン刺激に対する機械的反応を,皮膚に装着したピエゾ電流計で皮膚圧を記録して調べた.希釈したエピネフリンま たはノルエピネフリンを皮膚表面内側に与えると,皮膚は毎分約1回の膨張反応を示した.ただし,10% の標本では縮小反応を示した.これらの反応の基本には,腺細胞の細胞質のゲルに生じる容積変化が考えられる.[Short communication pp. 297-300] [English abstract]