日本生理学雑誌 第72巻 3号

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表紙の説明

XXXVI International Congress of Physiological Sciences ―IUPS 2009―
日本生理学会大会(京都)
演題番号:P1PM-9-5
演題:「海馬CA1 におけるα2*ニコチン性アセチルコリン受容体とLTP 誘導」
“ALPHA2* NICOTINIC ACETHYLCHOLINE RECEPTORS AND LTP INDUCTION IN THE HIPPOCAMPAL CA1 REGION”
演者:中内さくら1,2,リエラホルへ1,川島隆太1,澄川勝美2
所属:1 東北大・加齢研・脳機能開発,2 カリフォルニア大アーバイン校・神経生物行動

ニコチンは海馬CA1 においてシャーファー側枝(SC)でのLTP 誘導を促進させる(図A).またCA1 に存在するGABA 作動性インターニューロンはシナプス可塑性と学習の中心的役割を担っており,異なるサブタイプのニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)を発現しているが,そのサブタイプの局在性や機能の多くはまだ不明である.これまでの見解として,α7 nAChR は海馬において最も豊富に発現しているサブタイプであり,高いカルシウム透過性を示し,強くシナプス可塑性に関与していると言われてきた.本研究において,我々はニコチンによるLTP 誘導がnon-α7 nAChR 拮抗薬であるDHβE存在下で阻害され,α7 nAChR 拮抗薬であるMLA で阻害されないことを発見した(図B).さらに,α7 ノックアウト(KO)マウスにおいてはニコチンによるLTP 誘導の促進が観察されたが,α2 KO マウスでは見られなかった(図B).従来の研究により,脳において最も少ない発現量を示すα2* nAChR は,海馬CA1 の多形層/白板(stratum oriens/alveus)でのGABA 作動性インターニューロンに限局して発現していることが分かっている.したがって本研究結果は,ニコチン存在下においてα2* nAChRs が,インターニューロンの興奮を誘導することで神経回路の開閉を調節する分子として働き,LTP 誘導を促進することを示唆している(図C:電位感受性色素イメージングにおけるニコチン暴露時の神経活動促進とLTP 誘導促進の観察)