日本生理学会雑誌79巻4号

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表紙の説明

〈表紙の図〉

大会名:第94 回日本生理学会大会

演題番号:1P-025

演題名:コネクチンnovex-3アイソフォームはマウスにおいて胎児心筋細胞の分裂を促進する

演題名(英語):Novex-3 isoform of connectin/titin promotes proliferation of fetal cardiomyocytes in mice.

演者:橋本 謙,児玉 彩,呼元知子,本田 威,花島 章,氏原嘉洋,毛利 聡

所属:川崎医科大学・生理学1

説明(キャプション):

我々哺乳類の心筋細胞は胎児期には活発に分裂して原始心臓を形成するが,出生後には 細胞周期から完全に離脱し,永続的に分裂を停止する.従って,成体では虚血性心疾患等 で失われた心筋細胞を再生することは出来ず,故に本疾患は致死的であり,治療戦略の開 発が急務である.広く動物界を見た場合,哺乳類では胎児のみで心筋再生が可能であるが, 両生類の一部では成体でも心筋再生が可能である.我々は,これらの種を超えた再生心筋 に共通の特徴として「低酸素環境」が決定的に重要であり,哺乳類では出生時の肺呼吸開 始による酸素上昇が心筋分裂を停止することを明らかにした.更に,酸素環境に応じて心 筋細胞の細胞周期系を制御する重要遺伝子としてFam64a,及びコネクチンnovex-3 を同 定した.以上の知見は,心筋の分裂・再生が細胞内の遺伝子ネットワークだけでなく,そ の上流にある「酸素環境」という外部因子を含めた多階層のシステムによって制御されて いることを意味しており,将来的なヒト成体での心筋再生医療の実現に向けた基礎知見と なることが期待される.

A:培養系では殆ど分裂しない心筋細胞における固定細胞を用いた詳細な分裂解析.有糸 分裂の各phase 及び細胞質分裂はDAPI によるDNA 染色像により判定した.α-actinin は 心筋細胞のマーカーとして用いた.間期(interphase)では発達したサルコメアが見られ るが,有糸分裂中はサルコメア構造が一時的に解体される様子が分かる.矢印は分裂時の 赤道面,分裂溝を示す.

B:マウス胎児からの心筋細胞単離中における数時間の大気曝露により分裂能が大幅に阻 害されることが分かった為,胎児期の低酸素環境(約2%)を維持したまま心筋細胞を単離 する方法を確立した.本法を用いて単離した心筋細胞を異なる酸素環境下で培養したとこ ろ,高酸素下(21%)では細胞周期マーカーKi67 の発現が激減することが明らかとなった.

C:酸素環境に応じて心筋細胞の細胞周期系を制御する重要遺伝子としてFam64a を同定 した.更に,有糸分裂の中期後期遷移(metaphase to anaphase transition)において,本 分子がユビキチンリガーゼAPC/C により分解されることが心筋細胞の細胞周期の進行に 必要であることを明らかにした(図は生細胞を用いたタイムラプス観察).

D:同様の重要遺伝子としてコネクチンnovex-3 を同定・検討中である.本分子のノック ダウンにより心筋細胞の増殖が抑制された.

利益相反の有無:なし