日本生理学会誌 第79巻3号

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表紙の説明

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〈表紙の図〉

大会名:第93 回日本生理学会大会

演題番号:AC-24

演題名:海馬苔状線維単一軸索における活動電位伝播の確実性

演題名(英語):High fidelity spike propagation along single axon of hippocampal mossy fiber

演者:大浦峻介,神谷温之

所属:北海道大学・大学院医学研究科・神経生物学分野

説明(キャプション):  軸索は神経細胞の出力を担い,活動電位による神経信号の詳細な制御機構を理解するこ とは,神経生理学の重要課題の一つである.これに対し,中枢神経系における軸索は極め て細く,単一軸索レベルでの電気生理学的な解析は困難であった.私たちは,中枢神経系 では例外的に大きな海馬苔状線維(mossy fiber)の軸索終末を近赤外線微分干渉顕微鏡下 で同定し,ルースパッチクランプ法により単一軸索終末における活動電位を直接的に記録 することを可能にした.

本研究では,中枢軸索に典型的な通過型軸索(en passant axon)を構成する海馬苔状線 維が,どの程度確実に活動電位を伝導するかについて,単一軸索レベルでの検討を行った.苔状線維の起始細胞である歯状回顆粒細胞層に0.1Hz で低頻度刺激を与えると,ほぼ全て の試行で軸索終末での活動電位が記録された.苔状線維の細い軸索シャフトと大型の軸索 終末の構造に由来するインピーダンス不整合により軸索終末部を通過する際に予想される 伝導ブロックはほとんど生じないと考えられた.100Hz 1 秒の高頻度刺激を与えた際にも 活動電位の欠落は10±5%(n=14)しか生じなかった.海馬苔状線維における活動電位 は,伝導ブロックのリスクファクターである大型の軸索終末を複数回にわたり通過するに も拘らず,安全率の高い確実な信号を送ることが示された.

A:実験法の模式図.マウス海馬スライスの歯状回顆粒細胞層を電気刺激し,CA3 野透明 層において単一の苔状線維終末からルースパッチクランプ法により活動電位を記録した.

B:近赤外微分干渉(IR-DIC)法で観察した苔状線維終末(矢印)とCA3 野錐体細胞(*). スケール:5μm.

C:全か無かの法則に従う苔状線維終末における活動電位(軸索終末ユニット)の一例.

D:高頻度刺激(100Hz 1 秒)に対する応答.ほとんどの刺激に対して活動電位の欠落は 生じず,通過型軸索は遠位の軸索終末に確実に活動電位を伝えることを確認した.

利益相反の有無:なし