097.ドーパミンが樹状突起棘の形態可塑性に対して作用する狭い時間枠

100年以上前にソーンダイクやパブロフにより報告された条件付け学習において、どのようなタイミングで報酬が与えられるかが学習成立の要件であることが知られている。報酬はドーパミンが表すが、投射先でどのように報酬タイミングが検出され学習の基盤となる可塑性が制御されているかは不明であった。

我々はマウス側坐核のD1受容体発現中型有棘細胞において、グルタミン酸によるシナプスの活性化とドーパミン刺激を独立に制御し、シナプス可塑性に対するドーパミン一過性発火の作用を調べた。結果、単一スパインが活性化された直後2秒以内の狭い時間枠でドーパミンが与えられた時のみスパイン頭部増大(可塑性)がみられた。この時間枠の形成には細い樹状突起におけるcAMPの産生と分解の調節が関わっていた。このように単一スパインの可塑性が狭い時間枠の中でドーパミンにより増強されることが、ドーパミンの持つ報酬作用の神経基盤であると考えられた。

Yagishita, S. et. al. A critical time window for dopamine actions on the structural plasticity of dendritic spines. Science 345:1616-1620, 2014.

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