日本生理学雑誌 第75巻 6号

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表紙の説明

第90 回日本生理学会大会(東京)
演題番号:3PK-172
演題名:脳梗塞巣への単球/マクロファージの浸潤とケモカイン
Invasion of monocytes/macrophages into ischemic lesion of rat brain: involvement of
chemokines and their receptors
演者:大原雄大1,杉本香奈1,西岡龍太郎1,高橋寿明1,矢野 元1,鄭 菜里2,久門良明2,大西丘倫2,田中潤也1
所属:1 愛媛大学・医学部・分子細胞生理学,2 愛媛大学・医学部・脳神経外科学

ラット脳梗塞巣核心部には,発症後1 週間をピークに大量のマクロファージが集積し,死細胞の除去や神経保護因子の産生を通じて,梗塞巣の二次的拡大を抑制している.脳梗塞巣マクロファージは骨髄由来であり,血流中の単球がその前駆細胞であると考えられるが,脳梗塞巣への浸潤メカニズムは明確ではない.急性期ではケモカインのMCP-1(A)とフラクタルカインが梗塞巣で高発現しており,それぞれ内皮細胞とアストロサイトに局在していた.同時に,MCP-1 の受容体CCR2 およびフラクタルカインの受容体CX3CR1 を発現する単球様細胞が梗塞巣内の血管およびその周囲に散在していた.次に,接着分子群の発現変動を検討したところ,E-selectin, L-selectin(B),PECAM(D)の発現が急性期梗塞巣で高かった.これらの結果は,血流中の単球がMCP-1 に引き寄せられて梗塞巣周辺に集まり,次いで接着分子を介して内皮細胞へ接着,アストロサイト由来のフラクタルカインにより梗塞巣内へと遊走していく可能性が示唆された.

A-D.虚血後2 日目の梗塞巣およびその周辺部の染色像 Blue は,Hoechst 33258 による核染色.Scale bar; 300 μm
A:CD11b( green), MCP-1( red)
B:L-selectin( green), von Willebrand factor( vWF; red)
C:P-selectin( green), vWF( red)
D:Platelet-endothelial cell adhesion molecule-1( PECAM; green), vWF( red)
E:仮説:骨髄由来細胞の脳梗塞巣への浸潤メカニズム
★利益相反:全ての演者はこの研究において,利益相反に関わる事項はありません.