日本生理学雑誌 第75巻 2号

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表紙の説明

第89 回日本生理学会大会(松本)
演題番号:2PJ-47
演題名:骨髄間質における細胞外Ca2+濃度の上昇は脂肪細胞蓄積を促進する
Increased[ Ca2+]e enhances adipocyte accumulation in bone marrow stroma
演者:橋本良太1, 加藤洋一2, 中村京子1, 伊藤誠悟3 ,家崎貴文1, 代田浩之3, 中里祐二2, 岡田隆夫1
所属: 1順天堂大学・医学部・生理学第二講座, 2順天堂大学医学部附属浦安病院・循環器内科, 3順天堂大学・医学部・循環器内科学講座
骨髄の特徴の一つは,骨吸収による局所的な細胞外Ca2+ 濃度の上昇である. 骨髄には骨芽細胞の他,軟骨細胞,脂肪細胞などが存在するが,これらは共通の幹細胞である骨髄間葉系幹細胞から分化する. 本研究では,インスリンとデキサメサゾン存在下における高濃度Ca2+ の脂肪細胞への分化に対する作用を検討した.
A:親油性赤色色素オイルレッドO の染色像を示す. 脂肪前駆細胞株3T3-L1 細胞では細胞外Ca2+ 濃度が高くなるにつれて,オイルレッドO 陽性細胞数が減少した. 一方,骨髄間葉系細胞(BMSCs)では細胞外Ca2+ 濃度が高くなるにつれて,オイルレッドO 陽性細胞数が増加した.
B:BMSCs における細胞内Ca2+ 濃度の経時変化(蛍光Ca2+ 指示薬Fura-2/AM の蛍光強度変化)を示す. 細胞外Ca2+ 濃度の変化につれて細胞内のCa2+ 濃度も変化した.
C:図B のa, b で示した時点におけるBMSCs の細胞内Ca2+濃度を疑似カラーで示す. 細胞外のCa2+濃度を高くするとほとんどの細胞の細胞内Ca2+濃度が上昇した.
D:BMSCs に対するオイルレッドO の染色像を示す. 高濃度Ca2+処理によるオイルレッドO 陽性細胞数の増加は,細胞内Ca2+キレーターであるBAPTA-AM(1μM)処理により抑制された.
E:以上より, 骨髄において高濃度Ca2+ は細胞内Ca2+を上昇させ, 脂肪細胞への分化を促進することが示唆される.