日本生理学雑誌 第75巻 1号

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表紙の説明

第89 回日本生理学会大会(松本)
演題番号:2PJ-102
演題:「マウス心室組織より新しく同定された自動性を有するatypically-shaped cardiomyocytes(ACMs)の特徴」
“Characterization of self-beating atypically-shaped cardiomyocytes(ACMs)isolated from adult mouse heart: ischemic survival and autophagy”
演者:尾松万里子,松浦 博
所属:滋賀医科大学・生理学講座・細胞機能生理医学部門
成体マウス心室組織において,これまで知られていなかった種類の細胞の存在を探索した.ランゲンドルフ灌流による心室筋細胞単離の最終過程で遠心によって取り除かれる上清分画(cardiac myocyte-depleted fraction)を集めて培養したところ(A),3 日目頃から自動的に拍動を開始し(B 左),さらに2-3 日かけて長く伸長し枝分かれした突起を有する形態に変化する(B 右)細胞が存在することを見出した.これらの細胞は分裂せず,幹細胞マーカータンパク質の発現も見られなかったことから,atypically-shaped cardiomyocytes(ACM)して新規に同定した.ACMs では,拍動に伴って細胞内Ca2+ オシレーションが記録され(C),細胞全体に分布するサルコメア構造(D)が観察された.即ち,自動的に拍動する能力を持つ新種の細胞が成体の心室筋組織内に存在することを明らかにした.
A:細胞調整方法.心室筋細胞を遠心によって取り除き,上清分画(cardiac myocytedepleted fraction)を集めて培養した.
B:拍動するACMs の位相差顕微鏡像.培養3 日目(左図),6日目(右図).Bar,50 μm.
C:蛍光Ca2+ 指示薬fluo 4 を取り込ませたACMs からline-scan imaging によって記録されたCa2+ オシレーション.
D:α-actinin の免疫染色によるACMs のサルコメア構造.Bar,50 μm.