日本生理学雑誌 第72巻 1号

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表紙の説明

The 36th Congress of the International Union of Physiological Sciences and The 86th Annual Meeting of Physiological Society of Japan (京都)
演題番号: P1AM-2-5
演題: “Ionic mechanisms underlying the development of ventricular arrhythmias in dilated cardiomyopathy”
演者: 塩谷孝夫1, 森本幸夫2, 頴原嗣尚1*
所属:1 佐賀大学医学部生体構造機能学講座器官・細胞生理学分野, 2 九州大学大学院医学研究院生体情報科学講座臨床薬理学分野, *現所属:長崎国際大学薬学部臨床薬学分野生理学研究室

本研究では,拡張型心筋症(DCM)における心室性不整脈のイオン機序について検討した. 実験は,遺伝性DCM のモデルである変異型心筋トロポニンT ノックインマウス[1]から単離した心室筋細胞を用いて,ホールセルクランプ記録を行った. DCM マウスの心室筋細胞では,活動電位持続時間の延長と,β 刺激にともなう遅延後脱分極(DAD)・早期後脱分極(EAD)の発生が認められた(図A). 活動電位プラトー電位付近における膜電流波形は, DCM マウスと野性型マウスとで大きく異なっており(図B), DCM マウスでは内向きNa/Ca 交換電流の振幅増大と, 外向きIKur およびIto の顕著な振幅減少が認められた(図C・D). これらのイオン電流の変化が, 活動電位再分極の遅延やDAD・EAD の発生をもたらし, 心室性不整脈を生じさせると考えられた.
A: DCM マウスにおいて, イソプロテレノール(100nM)投与によって誘発された不整脈性活動電位の例. 縦線は電気刺激(5Hz)のタイミングを, 点線は0mV レベルを示す. スケールは200ms と40mV.
B: 活動電位プラトー電位付近における膜電流記録の例. 野性型(Ctrl)とDCM マウスの細胞を-70mV に膜電位固定し, 300ms の脱分極パルスで誘発した. スケールは1A/Fと100ms.
C: 膜電位-40mV におけるNa/Ca 交換電流の振幅.
D: 4-aminopyridine(100μM)感受性電流として単離した, IKur のピーク振幅のI-V 関係.
[1] Du CK, Morimoto S, Nishii K, Minakami R, Ohta M, Tadano N, et al. Knock-in mouse model of dilated cardiomyopathy caused by Troponin mutation. Circ Res. 101 : 185―194, 2007.