日本生理学雑誌 第71巻 1号

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表紙の説明

第85 回日本生理学会大会(東京)
演題番号: 3P-F-010
演題: 「カルシウムおよび膜電位シグナル測定による心筋細胞の興奮収縮連関異常と伝導異常の検出」
“Discrimination of Abnormal E-C Coupling from Abnormal Excitability in Multicellular Cardiac Preparation by Optical Imaging”
演者: 呉林なごみ1, 鈴木剛1, 2, 西澤寛人1, 2, 中里祐二2, 塩谷孝夫3
所属: 順天堂大・医・1 薬理, 2 循環器内科, 3 佐賀大・医
Ca2+過負荷心筋では, Ca2+トランジエントの異常 (Ca2+交代現象, 100 ミリ秒近くにもなるCa2+トランジエント発生遅延, Ca2+トランジエント欠落など) (図A) がしばしば見られるが, その原因が興奮収縮連関にあるのか, 活動電位発生にあるかはよく分からない. この点を調べるため, 同一の多細胞心室筋標本における細胞個々のCa2+と膜電位シグナルを, Rhod-2 とDi-4-ANEPPS を用いて, 光学的に測定した. その結果, Ca2+過負荷心筋におけるCa2+トランジエント異常の原因には, (1)興奮収縮連関の異常による時と, (2)活動電位の発生遅延や欠落による場合があることがわかった. また,100 ミリ秒近くにもなる活動電位の発生遅延は, ギャップジャンクションを通って流入する電流量の減少によって説明された. 図の説明A-a: Ca2+過負荷心筋の像. b,c: 隣接する2 つの細胞におけるCa2+シグナルのラインスキャンイメージ (Am J Physiol Cell Physiol 294:C1419,2008 より改変) B. 異常な興奮収縮連関の例. この場合, 隣接する2 つの細胞で,活動電位は毎刺激ごとに発生するのに対しCa2+トランジエントは交互に発生していた.