日本生理学雑誌 第70巻 12号

CONTENTS

表紙の説明

第85 回日本生理学会大会(東京)
演題番号:1P-F-025
演題:「ラット骨格筋線維における有機アニオントランスポーターの発現とその機能」
“Expression and function of organic anion transporting polypeptides in rat skeletal muscles”
演者:坂本多穂,三上博嗣,木村純子
所属:福島県立医科大学・医学部・薬理学講座
横紋筋融解症は高脂血症治療薬であるHMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)の重大な副作用である. しかしその発症機序は不明である. 我々は,初代培養ラット骨格筋線維を用いて,水溶性スタチンの代表であるプラバスタチンによる骨格筋線維障害の発症機序を調べた.
A.ラット足底の短肢屈筋から初代培養した骨格筋線維. (a)コントロール.(b)5 日間プラバスタチン処理した骨格筋線維. 細胞内構造が不明瞭でブレブが突出している. 背景の線維芽細胞には影響がない点に注目. B.筋線維と線維芽細胞そして株化ラット骨格筋細胞(L6 細胞)に対するプラバスタチンの濃度―生存率曲線. プラバスタチン処理5 日目で測定. プラバスタチンの毒性は筋線維に選択的である. C.骨格筋と線維芽細胞のRT-PCR 産物. スタチンを運ぶ薬物トランスポーターである有機アニオントランスポーター(Oatp)のうち,Oatp1a4 とOatp2b1 のmRNA が,骨格筋線維にのみ発現していた. M はDNA 分子量マーカー.プラバスタチンは,骨格筋線維に対して毒性を示すが,L6 細胞および線維芽細胞には示さない. スタチンを運ぶ有機アニオントランスポーターが骨格筋には発現しているが,他の細胞には発現していないためだと考えられる.
Reproduced from Sakamoto et al. British Journal of Pharmacology, 2008, 154 : 1482―1490.
Copyright 2008 Nature Publishing Group