日本生理学雑誌 第70巻 4号

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表紙の説明

第84 回日本生理学会大会(大阪)
演題番号: 2PHA-021
演題: 「魚類網膜におけるV-ATPase の組織化学的局在:プロトンによるフィードバック仮説を支持する根拠」
演者: 城宝浩2,1, 山本一徳1, 本間晃紀1, 中野健二2, 石川修司2, 佐野孝一2, 宍戸隆男2, 金子章道3, 山田雅弘1
所属: 1 首都大学東京・都市教養学部・生命科学,2 アステラス製薬・安全性研究所,3 星城大学・リハビリテーション学部
網膜における受容野周辺からの側抑制は従来のGABA によるnegative feedback 機構が否定され,以降,平沢と金子(2003)のproton feedback 説…等の諸説が提唱されておりメカニズムの解明が求められていた.今発表は水平細胞に膜電位依存的なproton 放出機構があるかを検証し,その膜蛋白(V-ATPase)の局在を証明することで『Proton feedback 説』を完成させるものである.
上段(左より) 金魚網膜のHE 染色.同じく蛍光抗体二重染色像(赤:GAD,緑:V-ATPase).その高倍率像:外網状層にはcone terminal の神経伝達物質小胞(vesicle)由来の強いV-ATPase 反応(大きな赤矢印)の中に,GAD とも反応している黄色のドーム状の染色域がほぼ水平細胞に近接して認められ(H1 水平細胞はGAD を持つことが知られており両抗体に陽性を示す黄色染色域は水平細胞のdendrite に存在するV-ATPase と考えられる), また水平細胞膜面にも僅かなV-ATPase 反応が認められる(小赤矢印). 同部位(外網状層付近)の電顕像. GABA 説に変わる新たなProton feedback モデル図: シナプス部位(赤円内)の詳細な機構説明は下記参照.
下段リボンシナプス免疫電顕像(dendrite のlateral element 部位): 光顕と同様にcone terminal の周辺にはvesicle 由来のV-ATPase 免疫反応が認められ,dendrite にもV-ATPase 反応(10nm gold particles)が認められる. 同部位はGAD 免疫反応も陽性であることから,このV-ATPase 反応部位は水平細胞のdendrite であることが示唆される. リボンシナプス電顕像.リボンシナプスでの詳細なProton feedback モデル図:膜電位依存的に水平細胞のV-ATPase からシナプス間隙に放出されるproton(H+)により,PresynapseのCa2+イオン流入は阻害され,その結果,神経伝達物質の放出は抑制(negative feedback)される.