日本生理学雑誌 第69巻 12号

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表紙の説明

第84 回日本生理学会大会(大阪)
演題番号:3PHP-031
演題:「電位依存性ホスファターゼCi-VSP における,膜電位感知―酵素活性相関の機構」
演者:村田喜理,岡村康司
所属:自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター
電位依存性ホスファターゼCi-VSP は,カタユウレイボヤのゲノム情報から見出された新たなタンパクで,ウニからヒトに到るまで保存されている.電位依存性イオンチャネルと同様な電位センサーをもち,4 番目の膜貫通部位に,典型的な陽性チャージの配列を示す(左中段).イオンを透過させるポア領域はもたず,ホスファターゼを細胞内に有する.
左下は,Ci-VSP と,カリウムチャネルKCNQ2/3 をアフリカツメガエル卵母細胞に共発現させた例を示す.
KCNQ2/3 チャネルは通常電位依存的な不活性化を示さないが,Ci-VSP の電位依存的酵素活性により,イノシトールリン脂質PIP2 の濃度減少が起こり,Shaker 型カリウムチャネルのような不活性化を示す.酵素活性の活性化は想像以上にすばやく起こることがわかった.カタユウレイボヤ(右図)は脊椎動物の祖先と類縁の尾索動物の一種で,発生後幼生期を経て変態して固着し写真にあるような幼若体を形成する.