日本生理学雑誌 第69巻 5号

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表紙の説明

第83回日本生理学会大会(前橋)
演題番号: 2P3−136
演題: 「ラット発達水晶体のX線回折像および生化学的解析」“X−ray diffraction and biochemical analysis of developing rat lens”
演者: 毛利 聡、八木直人、中山雅雄、森実祐基、宮坂武寛、片野坂友紀、太田 昇、井上勝晶,成瀬恵治
所属: 岡山大学・院・医歯薬学総合研究科,SPring−8/JASRI

「X-線回折像によるクリスタリン会合粒子の観察」
水晶体では,高濃度(~500mg/mL)クリスタリンが凝集することなく長期にわたり透明性を保っている.この特性獲得のメカニズムを明らかにするため,幼弱ラット水晶体のタンバタ解析とX-線によるクリスタリン会合粒子の構造評価を行った.

A: 幼弱水晶体にて観察される低温白内障(生後7日).成獣と比較してタンパク濃度が低いにも拘わらず温度低下に対して混濁し,光を散乱する.
B: X-線(~1Å)による水晶体回折像.クリスタリンは分子量20kD程であるが,会合して平均40量体程度の粒子を作っている.生後10日頃より,この粒子径を反映する回折像がはっきりと観察されるようになる.
C: 温度変化による生後15日のラット水晶体X-線回折像の変化.温度低下と共に内側の強度が大きくなり,光散乱が増加する.56℃ではタンバタ変性により会合粒子の構造が壊れて凝集するため,回折像は消失する.