日本生理学雑誌 第68巻 7,8号

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第82 回日本生理学会大会(仙台) 演題番号: 3P110, 3P117 3P110:「二次性機能亢進状態の副甲状腺細胞は心筋様L 型カルシウムチャネルを発現する」(Abstract # 538 : Jpn J Physiol 55(Suppl)S207,2005) 演者(3P110): 松葉道知1, 須田憲男1, 赤羽悟美2, 横山啓太郎3, 飯田里菜子3, 大城戸一郎3, 原 志野3, 武山 浩4, 浦島充佳5 3P117:「機能亢進状態のヒト副甲状腺細胞において生理的なカルシウム濃度上昇で活性化されるジヒドロピリジン感受性カルシウム流入」(Abstract # 545 : Jpn J Physiol 55(Suppl)S209, 2005) 演者(3P117): 鈴木章文6, 松葉道知1, 飯田里菜子3, 武山 浩4, 柴崎敏昭6, 浦島充佳5, 須田憲男1, 横山啓太郎3 所属: 1慈恵医大・医・生理, 2東邦大・医・薬理, 3慈恵医大・腎臓高血圧内科, 4同外科, 5同臨床研究開発室, 6共立薬大・薬・薬物治療 副甲状腺細胞より分泌されるパラソルモン(PTH)は,血清Ca2+ 濃度を制御する主要ホルモンであり, その分泌は血清Ca2+ 濃度上昇に起因する副甲状腺細胞内Ca2+ 濃度の増加で抑制される. 細胞内Ca2+ 濃度上昇の主要経路として, IP3 受容体を介した小胞体(ER)からのCa2+ 放出が有力視されてきた. この説では, Ca2+-sensing receptor(CaR)への外液Ca2+ の結合によりGq-PLC 系を介してIP3 が生成され, それがER 膜のIP3 受容体を開口するとされる. 一方で, L 型Ca2+ チャネル作用薬がPTH 分泌に影響を及ぼすことを根拠に, 細胞内Ca2+ 濃度上昇への外液Ca2+ 流入の関与を示唆する報告もあるが, これまで副甲状腺細胞において細胞膜の脱分極で活性化されるCa2+ 流入を示す直接的証拠は得られていなかった. 今回, 我々は, 二次性副甲状腺機能亢進症患者より外科的に摘出された副甲状腺組織から酵素処理により副甲状腺細胞を単離培養し, 細胞形質膜の脱分極で活性化されるCa2+ 流入をパッチクランプ法および共焦点レーザー顕微鏡による細胞内Ca2+ 濃度測定法の両者で検出することに成功した. 膜の脱分極や細胞外Ca2+ 濃度上昇で誘起されるCa2+ 流入がL型Ca2+ チャネル阻害薬で抑制され, アゴニストのFPL64176 で促進されるなど, 副甲状腺細胞に発現するL 型Ca2+ チャネルが細胞内Ca2+ 濃度上昇を介したPTH 分泌抑制に関与している可能性を示すデータが得られた. 2 次性副甲状腺機能亢進症患者より外科的に摘出された副甲状腺組織より単離培養された副甲状腺細胞にFluo-3 を付加し,150 mM のK+ 溶液を投与したところ, Fluo-3 蛍光強度の一過性の上昇(Ca2+ transient)が観察された.ニトレンジピン存在下(10 μM)では上記応答が抑制された.