日本生理学雑誌 第68巻 6号

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表紙の説明

第82 回日本生理学会大会(仙台)
演題番号: 2P167
演題:「両側体性感覚野における半球間相互作用:神経活動に関与する脳循環反応の光学的シグナルによる観察」
“Observation of interhemispheric interactions between bilateral somatosensory cortices through activity-related hemodynamic signals”
演者: 根本正史1, 星 詳子1, 寺川 進2
所属: 1東京都精神医学総合研究所 脳機能解析チーム, 2浜松医科大学 光量子医学研究センター

大脳半球間における神経活動の相互作用は,皮質興奮の半球間時間差に強く依存する.体性感覚野においては,この時間差情報にしたがって,左右の入力情報の統合処理が行われると考えられる.図は,左右大脳半球の体性感覚野間における神経活動の相互作用をみるために,ラットの左右頭頂骨部に頭窓を作製し,賦活領域の皮質内電場電位(LFP,脳表より400-600μm 深部,図A)と,その神経活動に関与する586,605 nm の2 波長の内因性光シグナル(図B,C)を同時計測した結果を示している.586 nm は酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンの等吸収点,605 nm は脱酸素化ヘモグロビンの吸収が酸素化ヘモグロビンに比して著しく強くなる波長で,それぞれの反射光量変化のシグナルはヘモグロビン総量,及びその酸素化度の重要な指標となる.左下肢への電気刺激を標的刺激(test stimuli,TS : 0.8 mA,1 ms,5 Hz,10 パルス),右下肢への電気刺激を条件刺激(conditioning stimuli,CS :同一刺激条件)として,TS 単独(L)の10 シングルパルス,CS 先行後時間差(80,60,40,20,0 ms)をつけてTS を与える10 ペアパルス(R-80ms-L,R-60ms-L,R-40ms-L,R-20ms-L,R=0ms=L/同時刺激)の計6 種の刺激を擬似ランダムに与え,それぞれ10試行のシグナルを平均化した.図A 上段は,全パルスに対する約2 秒間の電場電位,下段は,各パルスに対する200 ms の反応を基線補正後に平均化したものである.左下肢TS に対する右体性感覚野LFP 陰性反応成分は,右下肢CSとの時間差60 ms で減少しはじめ,40 ms で最も強く抑制された.一方,血液量の変化と密接に関わる586 nm の光シグナルも,同様な干渉的抑制の賦活時間差依存性を示した(図B).また,組織の酸素代謝,血流,血液量の反応のバランスに関わる605 nm の光シグナルでは,いずれも初期の小さなdip と反射光増大の2 相性を示したが,両相とも,同じ時間差依存性を示した(図C).(bregma ;elec.,microelectrode ; ROI,径1.5 mm の関心領域で,初期相で最大反応を示す部位,図B,C の3 段目にその領域のシグナル強度の時間経過を示す)