日本生理学雑誌 第87巻2号

CONTENTS

表紙の説明

〈表紙の図〉
大会名:日本生理学会·第101回大会
演題番号:3P-070
演題名:軟体動物カキの心房心室型心臓とバネ分子コネクチン
演題名(英語):Atrioventricular hearts and molecular spring connectin in the mollusc oyster
演者:花島 章,木元弥咲,大平桃子,臼居 優,橋本 謙,毛利 聡
所属:川崎医科大学生理学1教室
説明(キャプション):
脊椎動物は心房による心室への血液充填システムを進化過程で獲得したが,私たち哺乳類の心房は退化し小さくなった.しかし,心房の大きさと心室機械特性との関係は十分に解明されていない.本研究では心房を有する軟体動物カキの心臓を,臓器レベルから心室の拡張性を規定するコネクチン分子まで多階層的に解析した.その結果,心房が心室に血液充填する心臓は普遍的にコネクチン弾性領域が長く心室拡張性が高いことが示唆された.

A:カキ心臓の位置(赤矢印)
B:カキの心臓と囲心腔.心臓は閉殻筋などに囲まれた等容積の内腔にある.
C:摘出したカキの心臓.心室に心房が2つ付随する.
D:カキ心臓の心エコー図.心室収縮時に内腔が陰圧になることで,血液が心房に流入する.
E:カキ心臓の心電図.心房の興奮を表すP波と心室の興奮を表すQRS波が存在する.
F:カキ心臓の心房心室圧.圧プローブを心室と心房に連続挿入した.開放循環系のため低圧である.
G:カキ心臓切片の組織染色.マッソン―トリクローム染色.心筋組織(濃赤)はスポンジ状で冠血管は無い.
H:カキ心筋細胞の蛍光染色.細胞膜(WGA,緑),アクチン(ファロイジン,赤),核(DAPI,青).細長い心筋細胞でT管は無く,サルコメアが核の周囲に多く存在した.
I:カキ心筋サルコメアの電子顕微鏡観察.ミオシンフィラメントは密ではなかった.
J:カキ心室の高分子量蛋白質の分離と同定.SDS-PAGE(3%アクリルアミドゲル)で分離し,質量分析で蛋白質を同定した(a-d).哺乳類よりも巨大なコネクチン様蛋白質が存在する.
K:カキ心室コネクチンのドメイン構造.PCRで配列を決定した.コネクチンの弾性領域は哺乳類に比べ長い.

利益相反の有無:なし