CONTENTS
- SERIES - 【第 9 回】これからの生理学会~次世代の育成~(平野勝也)
- INTRODUCTION - 【終身会員のご紹介】 齋藤敏之「私の歩みと生理学」、狩野方伸「シナプス研究者としてのこれまでの歩み」、松山清治「日本生理学会でのこれまでの歩み」、椛 秀人「嗅覚記憶の研究」、藤井 聡「石の上にも三十年」、杉原 泉「生理学会・生理学研究の思い出」、土屋 徹「終身会員に承認され思うこと」
- AWARD - 中島健一朗(第 24 回(2022 年度)日本生理学会奨励賞)
- AFTERNOON TEA - 大守(川﨑)伊織「臨床医の基礎研究」、戸田知得「日本とアメリカの剣道のはなし」、野口智弘「サンタクロースを捕まえる方法」
- ABSTRACTS - 第 55 回東北生理談話会
- ABSTRACTS (Pt.2) - 第 55 回東北生理談話会
表紙の説明
〈表紙の図〉
大会名:日本生理学会第 100 回記念大会
演題番号:1P-097
演題名:休止状態の電位依存性Na+チャネルにおける電位センサードメインのポアからの解離と二量体化によるチャネル間架橋
演題名(英語):Dissociation and inter-channel dimerization of voltage-sensor domains(VSD)of voltage-gated Na+ channel in the resting state
演者:Ayumi Sumino1,2, Takashi Sumikama1, Leonardo Puppulin1, Mikihiro Shibata1,2, Katsumasa Irie3
所属:1. Nano Life Science Institute(WPI-NanoLSI),Kanazawa University, Kanazawa, 920-1192, Japan, 2. Institute for Frontier Science Initiative, Kanazawa University, Kanazawa, 920-1192, Japan, 3. Department of Biophysical chemistry School of Pharmaceutical Science, Wakayama Medical University, Wakayama, 640-8156, Japan
説明(キャプション):
活動電位を発生させる分子素子である電位依存性ナトリウム(Nav)チャネルの作動メカニズムの理解は,生理学的また生物物理学的に重要である.Nav チャネルは,ポアドメイン(PD)と電位センサードメイン(VSD)から構成される.これまでの構造解析などにより,VSD は常に PD に密着しており,VSD の電位依存的な構造変化が PD に伝わってPD が開閉すると考えられてきた.しかし,生理的な条件下で開閉する際に,本当に VSDが常に PD に密着しているかどうかは不明であった.また,活動電位の立ち上がり段階においては Nav チャネルの活性化に正の協同性があると考えられているが,その協同性を生み出す分子間相互作用の実体も不明であった.我々は,電位依存性の異なる NavAb チャネルを脂質膜に再構成し,高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)でその構造動態を観察した.興味深いことに,活性化ゲートが開いたチャネルでは PD の周囲に VSD が密着していたが,静止状態にあるチャネルでは VSD が PD から解離し,さらに解離した VSD が二量化してチャネル間を架橋していた.計算上ではこの二量化は現実的なチャネル密度で起こり,活動電位の立ち上がり段階における正の協同性の説明となる可能性がある.
A,E:NavAb チャネルの細胞外表面を一分子観察した HS-AFM 動画のスナップショット
B,F:時間平均画像
C,G:局在 AFM 画像
D,H:HS-AFM で観測された構造の模式図
I:開閉の際の VSD 二量体を介したチャネル間架橋の解離と形成
A-D:野生型(0 mV で活性化状態)
E-H:E32Q/N49K 変異体(0 mV で静止状態)
利益相反の有無:なし